合同会社の登記手続

合同会社の「総社員の同意」加入社員の同意は何のために要るのか、定款変更の要件か、加入事実の証明かを切り分ける

本コラムの要点

定款変更の要件としての「総社員の同意」に、これから加入する社員は含まれない。
・それでも実務で加入社員の同意書を添付してきたのは、定款変更の要件のためではなく、加入の事実(意思)を証する書面として要求されているから。
・したがって、添付書類は「定款変更の総社員同意書」と「加入の事実を証する書面」を目的別に分けて組み立てるのが筋。

どこで混線するのか

・書籍の書きぶりに「総社員の同意(加入社員を含む)」とあるため、定款変更の要件だと誤解しやすい。
・しかし、加入社員は“定款変更によって初めて社員”になるため、要件上の「総社員」には入り得ないのが条理。
・一方で、登記実務では加入事実の証明として加入社員本人の同意書を求める解説が多い(持分譲渡の場面では、総社員同意書に本人記名押印があれば譲渡契約書を省略可等の運用も)。

添付書類の組み立て(目的別)

A. 定款変更の要件の証明(総社員の同意)
・対象:現に社員である者のみ
・内容:定款変更(加入条項の新設・修正等)に総社員が同意したことを示す書面
・加入予定者の署名・押印は不要(要件外)

B. 加入の事実の証明(加入意思と原因)
・形式例
 ・加入同意書(就任承諾書に相当)
 ・持分譲渡契約書/出資払込関係書類(原因が譲渡/新出資かで使い分け)
・代替:総社員同意書に加入者本人の記載・押印があり、加入が明白なら、別紙の契約書省略を許容する実務例もあり(持分譲渡の場合の記載を参照)

まとめ:A=定款変更の要件、B=加入の事実。別の要件・別の目的として二層で用意する。

ケース別の実務ポイント

新出資で加入するケース
A:現社員のみの総社員同意書
B:加入者の加入同意(意思表示)+払込の疎明

持分譲渡で加入するケース
A:現社員のみの総社員同意書(譲渡承認を含める)
B:譲渡契約書(または総社員同意書に譲受人本人の押印+加入が明白なら省略可の運用例)

ありがちな誤解とリスク回避

誤解①:「加入社員を含めないと定款変更の同意が無効」
→ ×。要件外。現社員のみで足りる。

誤解②:「加入の事実は出資払込だけで足りる」
→ △。加入の意思表示の書面を併せて残すのが安全。

誤解③:「総社員同意書1枚に全部詰め込めばよい」
→ △。詰め込むなら目的別に見出し・条項を分け、加入者本人の記載欄を明確に。

相談・照会で確認したいこと

① 加入原因:新出資/持分譲渡/相続・包括承継 等
② 定款条項の改定要否:社員名簿記載様式・別段の定め ほか
③ 提出体裁
・総社員同意書(現社員のみ)
・加入同意書(加入者本人)
・原因疎明(譲渡契約書/払込書類)
④ 省略可否:総社員同意書への本人記載で原因書類を省略できるかを管轄に事前照会

ひとこと条項例

・総社員同意書(定款変更)
「当会社は、合同会社の定款第○条(社員)を次のとおり変更することに総社員の同意をもって決定した。」

・加入同意書
「私は、当会社の社員として加入することに同意し、当該加入の原因は(新出資/持分譲渡)であることを証明します。」

本コラムまとめ

・加入社員の同意書は“要件”ではなく“加入事実の証明”。
・添付は二層構造(A:要件の総社員同意/B:加入の事実)。
・体裁を分けて整えると、補正リスクが激減します。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、合同会社の「総社員の同意」加入社員の同意は何のために要るのか、定款変更の要件か、加入事実の証明かを切り分けるをテーマに解説しました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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