決算公告のWEB開示をやめたら登記はいつ抹消するか、継続開示義務との関係・見落としやすいトリガー・実務フロー
公告方法の登記
本稿は、決算公告のWEB開示(「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項」=URL登記)を廃止したとき、抹消登記をいつ行うべきかを、提示ケースの範囲で整理します。
ポイントは次の3つです。
1.抹消登記のタイミング(5年の継続開示義務との関係)
2.見落としやすいトリガー(公告方法の変更ほか)
3.実務フローとチェックリスト(添付省略・連絡の受け方)
決算公告WEB開示の基礎(提示内容の要点)
・対象登記:商号登記に付随する「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項」(実務上「決算公告のURL登記」と呼称)。
・WEB開示のデメリット
・全文開示が必要(紙媒体は「要旨」で可)。
・5年間の継続開示義務がある。
・どんな会社が使うか:公告方法が新聞の会社で、費用削減のためWEB開示を選ぶ例が多い(官報公告よりも安価)。
・開始・終了の決定手続:定款変更は不要、取締役会決議も不要(もっとも、実務上は決議を推奨との記載)。
・上場会社の経緯:有価証券報告書提出会社は決算公告不要となり、既存のURL登記を申請により抹消した経緯あり。
抹消登記の正しいタイミング
結論:WEB開示を廃止した時点で、URLの抹消登記を行う。
・「5年の継続開示義務が残っている間は抹消できない(してはいけない)」という理解は誤り。
・継続開示義務は開示の実務運用に関する義務であり、登記の存否とは別に課され続ける。
実務イメージ
・抹消登記をしても、会社側はWEB上の過去公告を5年間維持する必要がある(URLを変更しても、登記簿にURLは残さない運用)。
・官報・新聞への紙面公告で遡及的に実施し、継続開示義務を途切れさせるという実務選択肢あり
見落としやすい「抹消のトリガー」
・公告方法の変更:新聞→官報へ変更したときは、WEB開示廃止の意向確認とURL抹消の要否確認が必須。
・運用の切替:今年から官報に決算公告を再開(または移行)したのに、URL登記だけ残存しているケースに注意。
・誤解パターン
・「継続開示5年が経ってから抹消する」が誤り。
・WEB開示をやめた旨の社内意思決定があるのに、登記抹消を失念。
・URL変更で実体として開示継続していても、登記は旧URLのまま(誰にも伝わらない)。
実務フロー(最短手順)
前提:WEB開示を廃止する(または既に廃止している)。
1.現状確認
・直近の決算公告の実際の掲載媒体(官報/新聞/WEB)
・登記簿のURL記載の有無
2.抹消方針の確定
・WEB廃止日(または廃止確定日)を特定
・以後の公告媒体(官報・新聞)を確認
3.申請準備
・添付書類:原則不要(委任状のみ)
・登記の事由/登記すべき事項:URLの抹消
4.申請・完了
・抹消登記申請
・閉鎖記録移行のスケジュール管理(3年で閉鎖記録へ移る点を踏まえ社内控えを残す)
5.開示運用のケア
5年継続開示の履行(WEB継続・紙面公告の組合せ等、会社方針どおり)
チェックリスト(社内・受任側)
・公告方法を変更した(新聞⇄官報) → URL抹消の要否を確認
・今年の決算公告は官報で実施 → URL抹消が済んでいるか
・WEB開示の停止を社内で決定 → 抹消登記の手配
・5年継続開示の誤解 → 「廃止時に抹消登記」が正解であることを共有
・新規受任時 → 「間違い探し」としてURL登記の残存と実際の公告媒体を突合
ケースからの学び(提示事例の要旨)
・ケース1:公告方法を官報へ変更したが、URL抹消を失念。
→ 受任後、官報公告に戻した事実と登記簿のURL残存を突合して発見。
・ケース2:「継続開示5年が終わってから抹消」と誤解し、抹消を先送り。
→ 廃止時に抹消するのが正しい(H14.9 民事月報P36 参照の旨の記載)。
まとめ(実務メモ)
・結論:WEB開示を廃止したら、その時点でURL抹消登記。継続開示義務は登記と独立して存続する。
・現場ケア:公告方法の変更や官報回帰のタイミングで抹消漏れが頻出。新規受任時はURL残存の有無を必ず点検する。
・手続:原則委任状のみで迅速に対応可。社内には継続開示義務の誤解を正す周知を。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、決算公告のWEB開示をやめたら登記はいつ抹消するか、継続開示義務との関係・見落としやすいトリガー・実務フローを解説いたしました。
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