指名委員会等設置会社における「執行役・代表執行役」の就任承諾書
何を誰から集める?議事録で援用できる?実務落とし穴の整理
指名委員会等設置会社では、取締役・委員会・執行役・代表執行役が絡み、役員変更の都度「就任承諾書」と議事録の援用可否が問題になります。
とくに、同一人物が取締役・執行役・代表執行役を兼ねる場面で「どの肩書き分の就任承諾書が要るのか」を取り違えると補正リスクが高まります。
本稿では、提示ケースに沿って必要書類の早見表と議事録の記載要件/援用の可否、典型ミスと回避策を整理します。
本コラムの結論サマリー
・肩書きごとに就任承諾は別物と捉えるのが安全運用。
※取締役の就任承諾書だけで、執行役の就任承諾書を代替できません。
・代表執行役の就任承諾は、取締役会議事録に被選定者の個人実印があり席上承諾の記載があれば、承諾書を議事録で援用可。実印を押さない運用なら承諾書を別途作成。
・取締役会議事録には出席執行役の氏名記載が必要(署名押印は不要)で、欠落は補正リスク。
・商業登記規則61条5項に基づく住所付記の要否は、肩書き・援用有無で変動。代表執行役は印鑑証明書添付により住所記載を省ける運用がある一方、取扱いに地域差があり得るため注意。
必要書類の早見表(ケース設定)
前提・A=新任取締役かつ新任執行役かつ新任代表執行役/B=新任執行役
役位 | A(社長想定) | B |
---|---|---|
取締役 | 就任承諾書(住所付) | ― |
執行役 | 就任承諾書(住所付) ※Aも別紙が要る | 就任承諾書(住所付) |
代表執行役 | 就任承諾書(実印付) または 取締役会議事録で援用(席上承諾+個人実印) | ― |
添付本人確認 | A:印鑑証明書(代表執行役) | B:本人確認証明書 |
典型ミス→Aについて「取締役の就任承諾書があるから執行役は不要」と誤解。別紙が必要です。
取締役会議事録の必須チェック
・出席執行役の氏名:記載要(署名押印は不要)。欠落は補正対象になり得ます。
・席上就任承諾の記載:執行役/代表執行役を議事録援用する場合は承諾の明示が前提。
・代表執行役の援用要件:被選定者の個人実印を議事録末尾に押印していること。
援用可否と住所付記の考え方(実務運用の整理)
代表執行役
・援用可:席上承諾の記載+個人実印あり
・援用不可:実印なし運用なら承諾書を別途作成
・住所記載:印鑑証明書添付により省略可の運用あり(地域差に注意)
執行役
・原則、就任承諾書(住所付)を作成。
・同一人物が取締役でも、執行役分は別に求める運用が基本。
取締役
・株主総会出席がない場合は**就任承諾書(住所付)**を提出(議事録援用不可の前提)。
代表執行役の選定に関する留意
・執行役が1名ならその者が代表執行役、複数なら取締役会で選定(互選不可)。
・執行役A・B、代表執行役Aの体制でAが辞任して執行役がBのみとなった場合の自動的代表権付与は想定されないため、取締役会での選定決議が必要になる前提で書類を整えるのが安全。
よくある補正リスクと回避策
・Aの執行役承諾書が欠落:取締役承諾で満足せず、執行役分を個別収集。
・代表執行役の援用条件不足:議事録に席上承諾・個人実印を確実に。なければ承諾書別紙。
・出席執行役の氏名抜け:議事録本文または末尾に追記(ゴム印・手書きでも整合が取れれば可)。
・住所記載の運用差:事前に所管法務局の扱いを確認。印鑑証明書添付での住所省略可否は地域差があり得ます。
チェックリスト(提出前最終確認)
1.A:取締役・執行役・代表執行役の3点がすべて揃っているか
2.B:執行役の就任承諾書(住所付)+本人確認証明書があるか
3.取締役会議事録:出席執行役氏名/席上承諾/代表執行役の個人実印(援用時)を満たすか
4.住所記載の要否・援用可否の整合が取れているか
手続きのご依頼・ご相談
本日は、指名委員会等設置会社における「執行役・代表執行役」の就任承諾書について解説いたしました。
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