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「●年●月●日をもって」とはいつを意味するのか?登記実務における日付と効力発生時点の解釈

●年●月●日をもって

会社の登記実務では、「辞任」「就任」など役員異動の効力発生日を明確にする必要があります。その際にしばしば登場する表現が「●年●月●日をもって」という文言です。
ところが、この表現が具体的にいつを指すのか(その日の開始時か終了時か)については、実務上誤解や補正の対象になることがあります。

「をもって」と「日付で」の違い

「●月●日をもって」→一般的には、その日の24時(=その日が終了する時点)を意味すると解されています。
「●月●日付で」→その日を効力発生の基準日とし、特に時刻を意識せず日付ベースで処理する場合に用いられます。

書類によって表現が異なることがあり、議事録には「終結をもって辞任」、辞任届には「●月●日をもって辞任」と書かれているなど、文言の統一が図られていないケースが少なくありません。

実務上の取扱い

登記実務においては、文言が厳密に一致していなくても、日付が一致していれば補正不要とされる運用が一般的です。
たとえば、「8月31日をもって辞任」であれば、理屈上は8月31日24時に効力発生、登記申請は9月1日以降に行うのが本来。ただし、8月31日付で申請しても補正となることはほぼありません。
これは、いわゆる「善解理論」に基づく柔軟な運用であり、実務の混乱を避けるための対応といえます。

学説・先例の補強

『登記研究281号69頁・質疑応答4906』において、「本日をもって」とは「午後12時までである」と解するのが相当との回答が示されています。
つまり、「をもって」は当日末時点までを意味するという理解が、登記研究上の質疑応答でも裏付けられています。

実務上の注意点

・書類作成時には「就任日」や「辞任日」をできる限り明記し、議事録と承諾書・辞任届との文言を揃えることが望ましい。
・登記官によっては「日付不明確」と判断されることもあるため、補正リスクを避けるなら統一した書き方を心がけるべきです。
・特に、辞任と就任が連続する場合(例:取締役辞任と監査役就任のクロス)は、日付と効力の時点を明確に区別する書き方が重要です。

本コラムのまとめ

「●年●月●日をもって」は、厳密にはその日の24時をもって効力発生するとの解釈が妥当です。
もっとも、登記実務では日付が一致していれば補正対象とならない柔軟な運用が多く、文言の差異が問題とされることは稀です。
ただし、補正やトラブルを避けるためには、辞任・就任日を明確に記載し、書類間の整合性を図ることが肝心です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、「●年●月●日をもって」とはいつを意味するのか?登記実務における日付と効力発生時点の解釈について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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