吸収分割
事業譲渡における「社債」は承継できるのか?
事業譲渡
グループ内で事業を移転する際、選択肢となるのは 会社分割/事業譲渡/現物出資/事業移管 などです。
このうち「事業譲渡」では、個別に資産・負債・契約を移す必要があります。
問題は、譲渡財産に「社債」を含められるのか という点です。
組織再編における社債承継との比較
スキーム | 社債の扱い | 法的根拠 | 実務処理のポイント |
---|---|---|---|
合併 | 社債債務を包括承継。新株予約権付社債は新株予約権を付け替え | 会社法749条1項4号 | 包括承継。社債権者は会社法に基づき保護 |
会社分割 | 社債債務を承継可能。新株予約権付社債も同様 | 会社法758条1項5号 | 包括承継。手続により自動移転 |
株式交換・移転 | 社債債務は承継、新株予約権部分は消滅 → 親会社が新発行 | 会社法768条1項4号 | 特例規定。親会社で新規発行する整理 |
事業譲渡 | 承継規定なし。社債発行会社の地位移転は不可 | ― | 「社債の債務履行引受け」として整理するのが実務上妥当 |
事業譲渡での考え方
・会社法には 社債発行会社の地位移転を認める規定が存在しない。
・借入金のように「免責的債務引受け」で処理することも困難(特に無記名社債では同意・集会が不可能)。
・実務では、譲渡会社と譲受会社の間で
「社債の債務履行引受契約」 を結ぶ形で処理。
・発行体の地位は変わらない
・ただし弁済は引受会社が行う → 実質的には社債の償還を担う
実務チェックリスト
・契約書には「社債の債務履行引受け」の趣旨を明記(単なる「承継負債:社債」としない)。
・会計・資金管理:利払・償還資金の手当方法を明確化。
・社債権者対応:通知・IRの要否を検討(無記名社債なら承継説明は困難)。
・他の負債:借入金等は債権者同意を前提とした免責的債務引受けで処理。
・スキーム選択:包括承継が必要なら会社分割や合併の利用も検討。
本コラムのまとめ
・合併・会社分割・株式交換・移転では、会社法上明確に社債承継の規定あり。
・事業譲渡では規定がないため、社債発行会社の地位移転は不可。
・実務対応は「履行引受け」として整理するのが安全。
・契約書で趣旨を明確化し、将来の紛争・誤解を防止することが重要。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、事業譲渡における「社債」は承継できるのか?について解説いたしました。
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