合併契約の承認時期と事前開示書類の取扱い
合併契約承認をめぐる論点
合併手続では、取締役会の承認 → 合併契約の締結 → 株主総会での承認という流れが一般的です。
しかし、実務ではスケジュールの都合上、契約締結前に株主総会の承認を行えるかという問題に直面することがあります。
特に、存続会社が新たに設立されるスキームの場合(※新設合併ではなく、設立した会社を存続会社とするスキームの場合)、まだ相手会社が存在しない段階で承認を進めてよいのか、注意が必要です。
事案の概要
ある合併の案件で、消滅会社側ではすでに株主総会の招集がされていました。
しかし、
・取締役会で合併契約を承認していない
・存続会社がまだ設立されていない
という状況だったため、株主総会2週間前から必要となる事前開示書類に、確定した合併契約を備置できないことが明らかになりました。
契約締結前の承認は可能か?
会社法には「契約締結前の承認は不可」との明文規定はありません。
しかし、株主や債権者に開示する契約は確定した内容でなければならず、少なくとも取締役会で承認済みであることが必要と解されています。
相手方がまだ設立されていない段階では、相手方の計算書類も備置できず、正式な承認決議を行う前提を欠くことになります。
本件での対応
最終的に、この案件では以下のように整理されました。
・正式な合併契約の承認決議は、存続会社設立後に改めて行う。
・株主総会では、契約内容の承認ではなく、合併スキームの了承(確認決議)にとどめる。
これにより、会社法上の手続の適法性を確保しつつ、プレスリリースなど対外的な説明責任に対応しました。
実務上の教訓
・合併契約を株主総会にかけるには、取締役会承認済みの契約を事前開示書類として備置できることが前提。
・契約締結前に株主総会の承認を行うこと自体は禁止されていないが、契約内容が未確定なままの承認はリスクが高い。
・プレスリリースや投資家対応のために前倒しで決議をする場合は、法的承認決議と区別した「確認決議」として位置づけるのが望ましい。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、合併契約の承認時期と事前開示書類の取扱いについて解説いたしました。
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