特例有限会社が承継会社となる吸収分割、商号変更と公告・登記の整合
特例有限会社の組織再編
特例有限会社が吸収分割の承継会社となるケースでは、効力発生日までに株式会社へ商号変更する前提で、途中の手続きを進めることが可能です。
本稿では、実務で必須となる表示・開示の扱いと、公告と登記の時期設計を整理します。
手続を進めるための前提条件(表示・開示)
吸収分割の途中段階では特例有限会社のままでも、次の対応が必要です。
契約書の商号表示
現在の商号に加え、株式会社へ移行後の商号も記載する。
効力発生の条件の明記
「承継会社が株式会社に商号変更することを条件に吸収分割の効力が生じる」旨を契約書に規定する。
公告・債権者催告での明記
公告・催告にも、上記の条件付効を記載する。
貸借対照表要旨の併載
特例有限会社に定時の決算公告義務はありませんが、吸収分割公告・催告には最終の貸借対照表要旨を併載する。
趣旨は、外形上「特例有限会社が承継会社」に見える誤解を避けつつ、「効力時点では株式会社」であることを明確に周知することにあります。なお、あらかじめ商号変更しても、途中で商号変更しても、やること(費用感)は同様です。
公告と登記の時期設計(商号変更 × 吸収分割)
一致が望ましい事項
公告に掲載される当事者表示と、公告時点の登記事項(商号・本店・代表取締役)は一致していることが望ましい。
“完了”まで必須ではない
実務上、公告掲載日の前日までに商号変更登記を申請していれば、日程上の整合は取れます(時間の余裕があれば、登記完了後に公告する運用がより確実)。
タイト日程への対処
公告原稿が「株式会社○○」で校了済みでも、申請の先行で(商号変更登記を公告日前日までに「申請」しておけばよいので)リスクを抑えられます。いたずらに“完了縛り”で前倒しし、全体工程を崩さないようにするのが現実的です。
効力発生日の連件申請という選択肢
商号変更登記と吸収分割登記を、効力発生日に“連件”で申請する運用もあります。
商号変更が効力条件である設計との相性は良い一方、たとえば委任状の名あてに「株式会社○○」と記せるか等、書類上の時点整合には注意が必要です。
レアではあるものの、知っておくと工程設計の幅が広がります。
受託タイミングと現場判断
・途中受託で工程の自由度が小さい場合でも、公告と登記の時点整合を押さえれば、無理な前倒しを避けられます。
・“特例有限会社である事実を目立たせない”意図で公告直前に商号変更を入れる設計もあり得ますが、公告後に商号変更でも支障なく回せることはクライアントへ情報提供しておくと有用です。
まとめ(実務チェック)
□ 契約書 → 現商号+移行後商号、商号変更を効力条件に明記
□ 公告・催告 → 条件付効の記載、最終B/S要旨の併載
□ 商号変更登記 → 公告日前日までに申請(可能な限り完了後公告)
□ 効力発生日 → 商号変更+吸収分割の連件も選択肢(書類の名あて・時点整合に注意)
上記を押さえれば、特例有限会社が承継会社となる吸収分割でも、公告・登記・効力の三者を破綻なく設計できます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、特例有限会社が承継会社となる吸収分割、商号変更と公告・登記の整合について解説いたしました。
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