定時株主総会直後の取締役会で何を決めるか(実務整理)
定時株主総会後の取締役会
定時株主総会で取締役が改選されると、取締役会設置会社では当日中に取締役会を開くのが実務です。
法律上の強制ではありませんが、改選により代表取締役が一時的に不在となるため、速やかな選定が必要になるからです。
総会には取締役・監査役が揃いますので、そのまま続けて開催するのが合理的です。
招集・同意の扱い(欠席者・新任者がいるとき)
・全員出席であれば、招集方法が厳格でなくとも紛れにくいのが実情です。
・欠席見込みの取締役(新任者を含む)がいる場合は、株主総会前に
「(就任後)総会直後の取締役会招集手続の省略・開催への同意」を書面で得ておく運用が実務的です。
※証拠性の観点から書面化が無難です(例:「就任承諾書 兼 同意書」)。
また、実務書では、改選前の招集権者が、総会に先立って“総会閉会直後に取締役会を開く”旨を各候補者へ通知する慣行が紹介されています(定款で招集期間短縮の定めがあることが前提)。
議長の決め方(仮議長→正式議長)
取締役社長は任期満了と同時にその地位も失います。したがって、会議冒頭は代表も社長も不在。
・出席取締役の互選で「仮議長」を定め、
・代表取締役(取締役社長)選定後は定款に従い正式議長に就く、という運びが大きめの会社で見られます。
直後の取締役会で決める主な事項
会社ごとに濃淡はありますが、最低限と望ましいを切り分けると見通しが良くなります。
区分 | 主な議案 | 実務ポイント |
---|---|---|
最低限 | 代表取締役の選定 | 登記上必須。総会直後に決めて空白を作らない。 |
望ましい | 役付取締役の選定(社長・会長・副社長 など) | 多くの会社は代表選定と分けて決議。順序は会社ごと。 |
望ましい | 取締役社長不在時の職務代行順序 | 改選で一旦クリアされるため決め直し。後日に回すと未整備になりがち。 |
望ましい | 取締役の業務分掌 | 常勤取締役の担当部門・ラインを明確化。決議がなくとも実態で業務執行取締役たり得ますが、決めておくと明瞭。 |
望ましい | 取締役の報酬決定 | 総会で総枠を決め、個別額は取締役会が一般的。任期満了で一旦クリアと捉えるのが基本的発想だが、全員重任・同額なら黙示継続として再決議を省く会社もあります。無報酬のケースも。※税務で確認されやすい論点のため社内理解を。 |
議事録・押印と「二段構え」開催
登記は改選日から2週間以内(初日不算入が通例)。といっても、
・取締役会議事録の押印回収(海外在住者がいる等)
・実質審議を要する案件の文面確定
に時間がかかります。
このため、ある会社では総会直後に“第1回”で最低限(代表選定等)を即決→その場で押印回収。後日“第2回”で残り議案をじっくり審議する運用を採っています。登記期限を死守しつつ、文書品質も担保できる現実的なやり方です。
まとめ(チェックポイント)
・総会直後に代表選定を最優先。議長は仮→正式の流れで整える。
・欠席・新任には事前同意書で招集省略をクリアに。
・代行順序/業務分掌/報酬は、この機に整理しておくと後の混乱防止。
・議事録押印の段取りを最初から設計。必要なら二段構えで確実に。
実際の議案構成は会社ごとに異なりますが、本当に必要な決議が漏れていないか、この機会に点検してください。
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本日は、定時株主総会直後の取締役会で何を決めるか(実務整理)を解説いたしました。
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