監査役が欠員のまま定時株主総会は成立する?監査報告と再招集の必要性
取締役と監査役の欠員の違い
取締役の場合→欠員が出ても残りが2名以上いれば、取締役会の決議は一応可能。
監査役の場合→会計限定監査役であれば取締役会への出席義務がないため、短期間であれば欠員状態でも表面上の支障は少ない。
しかし、問題は定時株主総会で生じます。
監査役不在と計算書類の承認
監査役設置会社(会計限定監査役を含む)では、計算書類の確定には監査報告が必要です。
流れ
1.監査役による監査
2.取締役会の承認
3.定時株主総会の承認
監査役が不在の場合、監査報告が出せないため、定時株主総会に計算書類を提出できないことになります。
結果として、株主総会で計算書類の承認ができず、後任監査役を選任してから改めて株主総会を開かざるを得ません。
臨時株主総会を先に開くべきか?
本来は、後任監査役を選任するための臨時株主総会を先に開催すべきです。
仮監査役を裁判所に選任申立てする制度もありますが、実務上は「裁判所に申立てするくらいなら臨時株主総会を開く」ことが多いため、この選択肢は現実的ではありません。
形式だけの承認のリスク
実務では「どうせ株主には分からないから」として、監査役が不在のまま計算書類を承認した扱いとし、その後の臨時株主総会を開かないケースもあるようです。
しかしこれは、株主に対する説明責任を欠く行為であり、会社法の趣旨に反するリスクが高いと言えます。
専門家間の意見の分かれ
・「登記に必要な株主総会議事録さえあればよい」という立場の司法書士
・「定時株主総会の適法性を確保すべき」という立場の司法書士
両者の見解が分かれ、依頼会社としては「耳障りのよい意見」に流れがちです。
しかし、株主総会が思い通りに進まない会社こそ、手続きを厳格に進めるべきです。
取締役の欠員に関する注意点
・原則として、取締役が最低員数を欠いた状態では通常の業務執行の決定はできない。
・例外的に、取締役を選任するための株主総会を招集する取締役会決議に限っては、法令や定款で定められた員数を前提に算定された定足数を欠かない場合、瑕疵は生じないと解される。
・したがって、取締役に欠員が出た場合も速やかに補充選任を行う必要があります。
本コラムのまとめ
・監査役不在では監査報告が作成できず、定時株主総会で計算書類を承認できない。
・臨時株主総会で後任監査役を選任した上で定時株主総会を行うのが本来の手順。
・登記手続きの形式を満たすだけではなく、株主総会の適法性を確保することが重要。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、監査役が欠員のまま定時株主総会は成立する?監査報告と再招集の必要性について解説いたしました。
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