上場会社におけるBS要旨の公告と合併公告の実務
会計監査人設置会社における計算書類の確定
会計監査人設置会社(上場会社を含む)では、会計監査人から無限定適正意見が得られた場合、いわゆる決算取締役会で計算書類を承認した時点で計算書類が確定します。
例えば12月決算の場合、合併公告を行うタイミングによって公告対象となる決算期は次のように変わります。
・決算取締役会の翌日以降に公告 → 令和5年12月期の計算書類
・決算取締役会の当日または前に公告 → 令和4年12月期の計算書類
確定済みの計算書類であれば、公告を前倒して行っても差し支えありません。
大会社の場合の注意点
大会社では、貸借対照表(BS)の要旨に加え、損益計算書(PL)の要旨も公告しなければなりません。
そのため、合併公告と同時にBS要旨を掲載しても、別途改めて決算公告を行う必要がある点に注意が必要です。
上場会社の場合の問題点
上場会社は会社法440条4項により決算公告義務が免除されています。通常は有価証券報告書の提出によって開示が代替されます。
しかし、問題となるのは、
決算取締役会の翌日から株主総会の開催日までの期間です。
・この期間は、計算書類は確定しているものの、有価証券報告書はまだ提出されていません。
・したがって、この時期に合併公告を行う場合、公告と併せてBS要旨を掲載する必要があると解されています。
有価証券報告書の提出時期と実務への影響
2009年12月31日以後終了する事業年度から、有価証券報告書は定時株主総会前でも提出可能になっています。
ただし、実際に総会前に提出している会社は少数にとどまっています。
そのため、実務では次の点が注意されます。
・「問題の時期」に合併公告を掲載する場合は、有価証券報告書が既に提出されているか確認すること。
・提出がなければ、公告とともにBS要旨を掲載すること。
今回の事案での対応
今回の合併では、決算取締役会前に公告を行うスケジュールであったため、結果的にこの問題を回避できました。
しかし、上場会社が当事者となる合併は、小さな形式的な不備でも大きな問題に発展する可能性があるため、スケジュール設計や公告内容には細心の注意が必要です。
本コラムのまとめ
・会計監査人設置会社では、決算取締役会での承認時に計算書類が確定する。
・大会社ではBS要旨に加えPL要旨の公告も必要。
・上場会社は決算公告義務が免除されるが、決算取締役会から株主総会までの間は有価証券報告書が未提出のため、公告時にBS要旨が必要。
・2009年以降、有価証券報告書は株主総会前に提出可能となったが、実際に行う会社は少ない。
・実務上は、有価証券報告書の提出状況を必ず確認し、必要に応じて公告にBS要旨を併載することが求められる。
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本日は、上場会社におけるBS要旨の公告と合併公告の実務について解説いたしました。
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