株式の取得日は売買契約日ではなく名義書換請求日、株券不発行時の公告不要と株主名簿の注意点
株券不発行が原則となった背景
会社法施行以降、株券不発行が原則となりました。
そのため、もともと株券発行会社であっても、株券を廃止する会社が増えています。
もっとも、定款変更や登記の手間・費用を理由に、形式上は株券発行会社のままにしている会社も存在します。
実際に株券を発行していなければ特に支障はなく、株式譲渡がなければ運用上問題は少ないのが実情です。
株券提供公告とその不要ケース
原則として株券発行会社においては、株券提供公告を伴う手続(例:株券廃止、株式譲渡制限の設定、吸収合併〔消滅会社側〕など)が必要です。
しかし、実際に株券が発行されていない場合(株券未発行)には公告不要とされています。
登記申請時には、公告が不要であることを証明するために株主名簿を添付することになります。
株券を発行している場合には株主名簿に株券番号を記載しますが、これが記載されていないことで「株券未発行」であることを示すことができます。
株主名簿の形式と実務
株主名簿の書式は法律で定められておらず(会社法第121条)、必要な記載事項さえ備わっていれば形式は自由です。
紙媒体でも電子データ管理でも差し支えありません。
実務では、各社独自の株主名簿が提出されることになります。
「株式の取得日」をめぐる問題
株主名簿に関する実務でしばしば問題になるのが、「株式の取得日が不明」というケースです。
株式の取得日は会社法121条上、株主名簿の記載事項とされています。
しかし実際には「取得日を確認できない」という会社も多く存在します。
その場合、やむを得ず取得日の記載を欠いた株主名簿を提出することもあります。
調査官によっては補正を指摘される場合もありますが、登記が受理されることも多いのが現状です。最終的には会社側に調査を依頼せざるを得ません。
株式の取得日の定義
実務上誤解されがちですが、株式の取得日=売買契約の日ではありません。
正確には、株主が会社に対して名義書換請求をした日が「株式の取得日」となります。
そのため、株式の売買契約締結日や所有権移転日と取得日が一致しないケースは少なくありません。
本コラムまとめ
・株券不発行が原則化されたため、多くの会社で株券廃止が進む一方、形式的に株券発行会社のまま残るケースもある。
・株券未発行の場合、株券提供公告は不要であり、株主名簿の添付で代替可能。
・株主名簿は書式自由だが、取得日の記載が問題になることが多い。
・株式の取得日は「売買日」ではなく「名義書換請求日」である点に注意。
手続きのご依頼・ご相談
株式の取得日と株主名簿の実務について解説いたしました。
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