自己株式消却の実務と効力発生日、非上場会社と上場会社実務の比較
自己株式消却の基本構造
会社法178条により、株式会社は自己株式を消却できます。手続きは比較的シンプルで、取締役会の決議のみで足りるのが原則です。
決議は期限付で行うことも可能で、登記添付書類は取締役会議事録と委任状程度とされています。
税務上も「消却しない不利益」がないため、自己株式はそのまま保有されることも多く、消却は「必要に応じて行う」性格を持ちます。
上場会社に特有の取扱い(振替制度)
上場会社の場合、自己株式は振替制度の下で管理されているため、社債・株式等の振替に関する法律158条が適用されます。
・発行者は、自己の振替株式を消却する際、振替機関に「抹消の申請」を行う必要がある。
・効力発生日は、振替口座簿に減少の記録がされた日とされる(同法158条2項)。
したがって、上場会社の自己株式消却では「決議した日」だけでは効力は発生せず、振替機関での抹消記録がなされた日が効力発生日となります。
実務上は期限付決議を行い、振替機関での処理と整合をとるのが一般的です。
「消却する株式数」をめぐる論点
会社法178条は「消却する自己株式の数(種類株式発行会社は種類ごと)を定めなければならない」と規定しています。
そのため、取締役会決議では具体的な株式数を明示する必要があるのかが問題になります。
・上場会社のIR情報を確認すると、ほとんどの会社は具体的な株数を決議して開示している。
・一部では数を明示せず、後日確定数を開示している例もある。
文献調査では、商事法務誌(1812号・1837号)において「消却株数が一義的に定まるのであれば、柔軟な決議を許容できる」とする見解が紹介されており、実務でも登記が受理された例があると報告されています。
実務上の整理と法務局対応
実務で問題となるのは、株式交換直前に株式買取請求が行使され、子会社が直前に自己株式を取得するケースなどです。
この場合、取締役会決議時点で正確な株数を把握できないことがあります。
法務局に照会した事例では、
・消却株数が一義的に確定するのであれば、再度の取締役会決議は不要
・ただし委任状には確定した株数を記載すること
・必要に応じて会社の開示資料(HP掲載のIR情報など)を参考添付すること
とされ、柔軟な運用が認められました。
もっとも、これは先例で明文化されたものではなく、解釈・運用によるため、個別に法務局へ確認するのが安全です。
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