役員の定年制度は導入できる?定款規定・内規との違いと実務対応
役員の定年制度とは何か?
会社の役員(取締役・監査役等)には、会社法上、年齢による退任義務(いわゆる「定年」)の規定は存在しません。
しかし実務においては、一定の年齢に達した役員を退任させる「定年制」を採用している企業も存在します。
こうした制度は、企業のガバナンス方針や経営の新陳代謝を促す目的で設けられることが多く、特に上場企業においては導入率が比較的高い傾向にあります。
ただし、役員の定年制は法律に根拠を持つものではないため、その導入・運用には注意点があります。
定款で定める「役員の定年」は有効か?
役員の定年制度を定款に明記することは可能です。
たとえば「取締役は●歳に達した時点で任期満了をもって退任する」といった条項を定めることで、会社としての方針を明文化できます。
このような条項は、旧商法下から有効とされており、会社法施行後も効力を否定する実務通達や裁判例は確認されていませんが、
「定年到達=当然退任」とする場合は、あくまで任期満了とセットで構成される必要があります。
つまり、途中退任(任期途中で定年到達)を自動退任とする定めは、法的効力が不明瞭でトラブルのもとになる可能性がありますし、これを根拠に退任登記を申請することは、できません。
内規で定める「定年」の限界と活用実務
定款に記載せず、取締役会規則や人事内規などで定年制を導入している企業も多数存在します。
この場合、定年制度はあくまで「社内の任期管理方針」としての性質にとどまり、法的拘束力はありません。
たとえば、以下のような内容がよく見られます。
規定項目 | 具体例 |
---|---|
定年年齢 | 「取締役は満●歳、監査役は満●歳をもって定年とする」 |
運用方針 | 「定年到達後は株主総会での選任推薦は行わない」 |
例外規定 | 「特段の事情があるときは取締役会の決議により継続可能」 |
任期中の扱い | 「任期満了まで在任とするが、それ以降は原則として退任」 |
このような「訓示的」運用が大半であり、登記手続との直接のリンクはありません。
実務上の注意点と登記との関係性
定年制度をどのように運用するかは、定款・内規どちらに定めるかによって大きく異なります。
特に注意が必要なのは、「定年を理由に登記上の退任手続ができるか」という点です。
結論から言えば、
・定款に明確な定年条項があり、それが任期と連動している場合は、登記上の根拠として扱える可能性がある
・しかし、登記実務としては「定年に達したために任期途中で当然に退任」とする取扱いは認められていない
・したがって、定年到達時点では辞任届の提出または任期満了をもっての退任登記が原則
定年制度をスムーズに運用するには、あくまで任期管理の観点から対応すべきであり、「定年=登記原因」とは出来ないと考えるのが一般的です。
つまり、
・役員の定年制度は定款または内規で導入可能
・定款に定める場合は、任期満了と連動する形で明文化を
・内規による場合は拘束力が弱く、登記との関連はなし
・登記上の「退任」には辞任や任期満了等の適切な手続が必須
ということになります。
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本日は、役員の定年制度は導入できる?定款規定・内規との違いと実務対応について解説いたしました。
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