特定の取締役だけ任期を短縮できる?非公開会社における個別任期の設定と株主総会決議の扱い
非公開会社で取締役任期を個別に短縮することは可能か
非公開会社では、会社法上、取締役の任期を定款で10年まで伸長することが認められています。
そのうえで、「特定の取締役の任期だけを5年に短縮したい」といったケースが現実にあり得ます。
では、こうした個別任期の設定は、株主総会の決議によって行うことができるのでしょうか。
一般に、株主総会による任期の短縮は法定任期(会社法332条1項の「2年以内」)を基準とするものと理解されがちですが、定款により10年に伸長されている場合でも、その10年を起点に短縮できるか否かが論点となります。
会社法の条文構造と解釈のゆらぎ
会社法332条1項のただし書きでは、「定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない」とされています。
この「任期」が指す対象が、法定任期(2年)に限定されるのか、それとも定款で伸長された任期も含むのかは、明示されていません。
しかし、実務では、補欠・増員規定のない会社で任期をそろえる目的で、定款により1年任期としておき、さらに株主総会決議により任期を短縮するケースが現に存在します。
これを前提とするなら、「定款で定めた任期」が基準となり、そこから株主総会決議でさらに短縮することができると考える方が整合的です。
「定款+株主総会決議」の組み合わせと実務的な定め方
この点を踏まえ、「定款で10年の任期を定めつつ、個別の取締役については株主総会決議で5年とする」ことは、実務的には可能と考えられます。
たとえば、定款において次のような記述があったとします。
このような「任期の短縮条項」が明記されていれば、株主総会の場でA取締役だけ任期5年、B取締役は10年という具合に柔軟な設定が可能です。
もっとも、こうした定款の書きぶりが会社法の趣旨に完全に整合しているかは議論の余地があります。
実務上も定款に「10年以内で株主総会が定める」等の抽象的な記述は避け、具体的な年限と短縮可能性を明示することが推奨されます。
制度解釈の実務的帰結と提案
結論として、非公開会社において定款で任期を伸長した上で、特定取締役については株主総会の決議で任期を短縮するという運用は、実務上は受け入れられていると考えられます。
ただし、定款の文言が曖昧であると、法務局での補正対象となるリスクもあるため、定款の設計段階での文言調整は不可欠です。
取締役ごとに任期を調整するニーズがある場合は、「任期の短縮は株主総会で可」といった条文を定款に盛り込み、併せて任期計算に関する補足規定(例:選任後何期目まで等)を置いておくと、トラブル防止につながるでしょう。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、特定の取締役だけ任期を短縮できる?非公開会社における個別任期の設定と株主総会決議の扱いについて解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。