不動産登記手続

親族間で不動産を売買する場合の手続と費用のすべて

みなし贈与や登記の注意点

親族間で不動産を売買したいと考えたとき、通常の不動産取引と比較して柔軟な交渉が可能な反面、税務上のリスクや手続の複雑さに注意が必要です。
とくに「みなし贈与」と判断されると、想定外の贈与税が発生するおそれがあります。
本コラムでは、司法書士の視点から、親族間売買に必要な手続・費用・注意点をわかりやすく解説します。

親族間売買とは?

親族間売買とは、親・子・兄弟姉妹などの親族同士で不動産を売買することを指します。
相続税対策や共有名義の解消、事業承継の一環として行われることが多いですが、商業登記上も売買後の所有権移転登記が必須となります。

親族間売買のメリット・デメリット

項目 メリット デメリット
信頼性 相手が家族のため安心感がある 感情的対立に発展するリスク
価格設定 市場価格より安価に設定可能 安すぎると贈与税課税の可能性
手続き 仲介業者不要で費用削減 手続の不備リスクが高い
税制 相続対策として有効な場合も 譲渡所得控除・住宅ローン控除が使えないことも


手続の流れと必要書類

手続の基本的な流れ
1.登記事項証明書・評価証明書を取得
2.不動産査定(時価の把握)
3.売買条件の協議
4.売買契約書の作成
5.代金決済・引渡し
6.所有権移転登記(司法書士へ依頼推奨)

主要書類一覧

立場 書類 補足
売主 登記識別情報、印鑑証明、評価証明 名義確認と税務処理に必須
買主 住民票、印鑑証明(必要あれば) 登記手続時に必要


税金と費用の一覧

費目 金額(目安) 備考
印紙税 200円~6万円 契約書に貼付
登録免許税 評価額×0.3~2.0% 軽減税率あり
譲渡所得税 利益に応じ15~30% 特例が使えないことあり
不動産取得税 評価額×3~4% 軽減措置の確認必須
司法書士報酬 約10万~30万円 地域差あり


税務上の注意点、みなし贈与に要注意

不動産の売買価格が時価の80%未満と判断されると、「みなし贈与」に該当し、買主に贈与税が課税される可能性があります。

適正価格を設定するには?
・不動産会社の査定書を取得
・不動産鑑定士の評価書を添付(費用は高額)
・売買契約書を公正証書化するのも有効

登記手続きは専門家に依頼し確実を期す

不動産の名義変更は「所有権移転登記」によって初めて効力を持ちます。親族間での取引だからといって登記を怠ると、後に第三者との紛争につながることもあります。
売買契約書のチェック、税務アドバイス、抵当権抹消手続は、経験豊富な専門家へ依頼しましょう。

よくある相談とその対応策

よくある質問 専門家の回答
親子間の売買で住宅ローンは使える? 原則審査が厳しく、利用不可の場合あり
贈与と売買、どちらが得? 相続時精算課税や控除の有無によって異なる
他の親族に説明は必要? 推定相続人の理解を得ておくことがトラブル防止につながる


手続きのご依頼・ご相談

親族間での不動産売買は、家族関係に根差す信頼を背景に柔軟に進められる一方で、税制上の落とし穴や登記実務の複雑性も孕んでいます。
契約書作成や登記申請などの実務は、司法書士や専門家にご依頼いただくことで、リスクを最小限に抑えた安全な取引が実現します。

不動産売買などに関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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