株式消却とは?登記手続きや注意点を解説【商業登記】
株式償却
会社法や商業登記実務において「株式消却」はあまり頻繁に行われる手続きではありませんが、資本政策の一環として活用されることがあります。今回は、株式消却とは何か、そしてその登記手続きについて、司法書士の専門的視点から解説いたします。
株式消却とは?
まず、「株式消却」とは、発行済株式の一部または全部を消滅させる手続きです。
商業登記簿には、株式に関する以下のような事項が記載されます。
登記事項 | 内容 |
---|---|
発行可能株式総数 | 将来的に発行可能な株式の上限 |
発行済株式の総数および種類・数 | 実際に発行された株式の種類や数 |
株式の譲渡制限に関する規定 | 株式の譲渡に制限を設けているかどうか |
このうち、株式消却によって変更が生じるのは「発行済株式の総数」です。
《例》
・発行可能株式総数:1,000株
・発行済株式の総数:300株
・株式消却数:100株
→ 株式消却後の登記事項は以下の通りになります。
・発行可能株式総数:1,000株(変更なし)
・発行済株式の総数:200株(減少)
※消却できる株式は「自己株式」に限られます。
株式消却はすべての株式で行えるわけではなく、消却できるのは「自己株式」に限られます。
自己株式とは?
自己株式とは、会社自身が保有する株式のことです。
《例》
保有者 | 保有株数 |
---|---|
株式会社A | 100株(自己株式) |
株主X | 200株 |
この場合、会社が消却可能なのは自己株式の100株のみです。
自己株式の取得・保有に関するルール
かつてはインサイダー取引防止の観点から、会社による自己株式の保有は原則禁止されていましたが、2001年の法改正により自己株式の保有が可能となりました。
ただし、親会社による子会社株式の保有には処分義務が課されるなど、例外規定には注意が必要です。
自己株式の権利に関する注意点
権利項目 | 自己株式の扱い |
---|---|
議決権 | なし |
剰余金の配当請求権 | なし |
残余財産の分配請求権 | なし |
自己株式は通常の株式と異なり、上記のように株主としての権利がありません。
株式消却の手続きの流れ
株式消却の流れは以下の通りです。
手続き項目 | 内容 |
---|---|
決定機関 | 取締役の過半数、または取締役会(設置会社の場合)で決定 |
決議内容 | 消却株式の種類および数を決議 |
必要書類 | 取締役会議事録、登記申請書など |
登記申請の期限 | 効力発生日から2週間以内に法務局で登記 |
※株式消却は会社の所有株式に関する処分であり、他の株主の権利を直接侵害するものではないため、株主総会の決議は不要です。
株式消却の効力発生日
効力発生日は、株券の発行の有無によって異なります。
株券の有無 | 効力発生日の要件 |
---|---|
株券発行会社 | 消却決議 + 株券破棄 + 株主名簿からの抹消 |
株券不発行会社 | 消却決議 + 株主名簿からの抹消 |
登録免許税と司法書士報酬
株式消却にかかる登録免許税は以下の通りです。
費用項目 | 金額 |
---|---|
登録免許税 | 3万円(定額) |
司法書士報酬(参考) | 別途見積もり |
登記手続きや議事録作成は複雑な場合もあるため、専門家である司法書士に依頼されることをおすすめします。
手続きのご依頼・ご相談
株式消却は会社の資本構成の調整や持株比率の調整に活用される重要な手続きです。
ただし、自己株式でなければ消却できない点や、登記期限、法的効果の発生日などに注意が必要です。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。