包括遺贈と特定遺贈の違いとは?発生する税金や注意点を解説
「包括遺贈」と「特定遺贈」
遺言によって財産を承継させる方法には「遺贈」がありますが、その中でも代表的なものとして「包括遺贈」と「特定遺贈」が存在します。
いずれも相続人以外の方に財産を渡す有効な手段ですが、両者には大きな違いがあり、遺言者の意図に合わない結果を招く可能性もあります。
本記事では、司法書士の視点から、包括遺贈と特定遺贈の違いや、それぞれにかかる税金、トラブル回避のための実務上のポイントを解説します。
遺贈とは何か?相続との違いを簡潔に整理
まず大前提として、「遺贈」とは遺言によって財産を譲渡する方法であり、法定相続人に限らず第三者(例えば内縁の配偶者、法人など)に財産を渡すことが可能です。
一方、「相続」は法律で定められた相続人が自動的に財産を承継する制度です。
包括遺贈と特定遺贈の違いを比較表で整理
比較項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
---|---|---|
対象財産の指定方法 | 全財産または一定割合(例:遺産の1/2) | 特定の財産(例:〇〇市の不動産) |
債務の承継 | あり(相続人と同様に債務も承継) | 原則なし(財産だけ受け取る) |
放棄の手続 | 家庭裁判所での相続放棄申述が必要 | 単なる意思表示で足りる |
遺産分割協議への関与 | 可能 | 不可 |
登記や税務の取り扱い | 相続と同様(登録免許税0.4%、非課税) | 通常の譲渡扱い(登録免許税2%、課税) |
包括遺贈の特徴と注意点
包括遺贈では、受遺者は相続人と同様の立場となり、遺産分割協議にも参加可能です。これは、相続登記の際にも有利に働く場合があります。
メリット
・遺産の内容が変動しても割合に応じて承継される
・相続人と同様に税務上の扱いを受けられる(登録免許税軽減、譲渡所得税の回避など)
デメリット
・債務も同様に引き継がれる
・放棄するには家庭裁判所での申述が必要
・遺留分を侵害する可能性がある(トラブルの種)
特定遺贈の特徴と注意点
特定遺贈は、特定の財産だけを渡す方法です。たとえば「〇〇銀行の預金口座」や「〇〇区のマンション」などが対象になります。
メリット
・財産のみを引き継ぎ、債務は負わない
・放棄の手続きが簡便で柔軟
デメリット
・不動産取得税などの課税がある
・財産が遺言者の生前に処分されていると無効になる恐れがある
・遺言執行者がいないと手続きが滞る可能性も
税金面での違いと注意点
遺贈においても、相続税の課税対象となりますが、方式によって取り扱いが異なります。
税項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
---|---|---|
相続税 | 課税される(基礎控除は変わらず) | 課税される(2割加算あり) |
登録免許税 | 原則0.4%(相続人扱い) | 2%(通常の贈与扱い) |
不動産取得税 | 非課税 | 課税対象(評価額3~4%) |
特定遺贈の場合は、遺贈財産が第三者に渡るケースが多く、相続税の2割加算の対象になりやすい点にも注意が必要です。
トラブル回避のために—遺贈を活用する際のポイント
遺贈は遺言者の最終意思を尊重する制度ですが、設計や実行の方法を誤ると法的トラブルや手続きの煩雑化を招きます。以下の点に注意が必要です。
・遺留分の侵害を回避:配偶者や子がいる場合、遺贈によって遺留分を侵害していないか確認が必要です。
・遺言の有効性確保:自筆証書遺言の場合は、方式の不備によって無効になるリスクも。公正証書遺言が望ましいです。
・予備的遺贈の記載:受遺者が先に亡くなった場合の代替受遺者を記載しておくと安心です。
・遺言執行者の指定:特に不動産の登記が関わる場合、司法書士など専門家を遺言執行者にしておくことが望まれます。
商業登記との関係にも注意を
法人に対して遺贈を行うケースでは、商業登記の変更や法人解散手続きが関わる場合があります。例えば、会社が受遺者となり不動産を取得した場合には、名義変更登記と合わせて定款の変更・目的追加などの商業登記も必要です。司法書士による包括的な支援が求められる場面です。
手続きのご依頼・ご相談
包括遺贈と特定遺贈は、それぞれ異なる法的効果・税務処理・実務負担があります。単に「この財産を渡したい」という気持ちだけでなく、債務の有無・相続人との関係性・税負担・登記手続きなど、多角的な視点から判断する必要があります。
当司法書士法人では、遺言の作成支援から遺贈・相続・商業登記の手続きに至るまで、総合的なサポートを行っております。
相続登記・会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。