合同会社と持分の相続の仕組みや注意点を解説
合同会社と相続
合同会社を設立したけれど、万が一のとき、家族にスムーズに引き継げるのだろうか?
これは、合同会社を経営されている方や資産管理会社として活用されている方にとって、決して他人事ではありません。
特に「相続」が関係してくると、予想外のトラブルや会社の解散といった事態を引き起こす可能性もあるため、事前の備えが非常に重要です。
今回は、合同会社における持分の相続の仕組みと注意点について、司法書士の視点から解説いたします。
合同会社の「持分」は相続できる?
まず最初に押さえておきたいのが、合同会社の持分(=出資に基づく権利)は、必ずしも自動的に相続されるわけではないという点です。
会社法第608条1項では、「定款において定めがある場合に限り、持分を相続人が承継できる」と明記されています。つまり、定款の内容がカギになるのです。
定款に「承継を認める旨の記載」がある場合
たとえば、「社員の死亡時には、その相続人が持分を承継する」といった条項があれば、相続人は社員として地位を引き継ぐことができます。経営を家族にスムーズに引き継ぐことが可能になります。
定款に規定がない場合
この場合、相続人は持分そのものを承継できず、社員にはなれません。代わりに、持分の「払戻請求権」を得ることになります。これは「出資の返還請求」ではなく、会社の財産状況によって金額が変動するため、出資額=返金額とは限らない点に注意が必要です。
相続の場面で起こりうるケーススタディ
以下のようなケースを見てみましょう。
ケース1:社員が複数名いる合同会社
2人以上の社員がいる場合、たとえ1人が亡くなっても、会社は継続可能です。
定款に承継条項があれば、相続人が新たに社員に加わります。
条項がなければ、残りの社員で会社を続け、相続人には払戻請求権が発生します。
相続人が誰になるかは、遺言書の内容や遺産分割協議により決定されます。
ケース2:1人だけが社員の合同会社
このケースは要注意です。
定款に相続人が持分を引き継げる旨の規定がある→相続人が承継し、会社は存続。
規定がない→社員が0人となり、会社は法律上「当然に解散」します(会社法第641条4号)。
このように、1人合同会社における相続対策は、会社の存続そのものを左右する重大な問題となります。
相続に備えた合同会社の工夫とは?
・定款の見直しを
まずは、「持分の承継に関する条項」が定款にきちんと記載されているかを確認しましょう。無い場合は、社員全員の合意により変更可能です。
家族を社員に加えておく
たとえば、ご家族がすでに業務に関与しているのであれば、あらかじめ出資(1円でも可)をして社員に加えておくことで、解散リスクを回避できます。
※ただし、社員を増やす場合には、議決権や利益配分のルールも合わせて定めておくと安心です。
手続きのご依頼・ご相談
合同会社は自由度の高い形態である一方、相続が発生したときにトラブルの温床となることもあります。
特に、次のような方は早めに対策をとっておくことをおすすめします。
・ご家族で事業をされている方
・資産管理会社として合同会社を活用している方
・1名社員で運営している方
「うちは大丈夫」と思っていても、いざという時にご家族が困らないよう、今のうちに定款や会社の体制を見直してみるとよいでしょう。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。