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役員任期を10年にするリスク

役員任期

会社法の改正により、取締役や監査役の任期を最長10年まで延長できるようになりました。
これにより、役員変更の手続きが減り、コストや事務負担の軽減につながります。

しかし、任期を長く設定することで、思わぬリスクが発生する可能性があります。
今回は、「役員の任期を10年にすることのメリットとデメリット」、そして「リスクを回避する方法」について解説します。

役員の任期を10年にするメリット

手続きの負担軽減
通常、取締役や監査役の任期は2年または4年が一般的ですが、任期を10年にすることで、役員変更登記や選任手続きを頻繁に行う必要がなくなります。

コスト削減
役員の改選ごとに発生する登記費用や、株主総会の開催コストを削減できます。
特に、オーナー企業などで役員構成が安定している会社 にとっては、大きなメリットになります。

経営の安定化
頻繁な役員交代がないため、長期的な経営戦略を立てやすくなります。
特に、事業承継を視野に入れている企業では、役員の任期を長くすることで、後継者への引き継ぎがスムーズに進む こともあります。

役員の任期10年のリスクとは?

任期を10年に設定することで、以下のようなリスクが発生する可能性があります。

1.役員の解任が難しくなる
会社法第339条第2項では、「正当な理由」がなければ、解任された役員は損害賠償を請求できると定められています。
つまり、解任の理由が「業務姿勢が悪い」「経営方針が合わない」程度では、会社は残りの任期分の役員報酬を賠償するリスクがある のです。

リスクの例
・5年目で役員の経営方針が合わなくなったが、解任すると残り5年分の報酬を請求される可能性がある。
・業績悪化の責任を取らせたくても、「正当な理由」とならなければ解任できない。

対策
定款や役員規程に「役員の行うべき職務や職務態度」を具体的に定めておくことで、後々のトラブルを回避しやすくなります。

2.役員が不適格でも長期間続投するリスク
任期が長いと、役員の能力や適格性を定期的に見直す機会が失われてしまいます。
10年の間に、経営環境や企業の状況は大きく変わる可能性があるため、時代に合わない役員が続投するリスクも考えられます。

リスクの例
・新しい経営戦略が求められるのに、役員が過去のやり方に固執してしまう。
・業務能力が低下しても、任期途中で辞めさせるのが難しい。

対策
定款で「任期途中の業務評価」や「一定の条件で解任できる規定」を定めておくことで、柔軟に対応できる仕組みを作ることが重要です。

3.事業承継の障害になる可能性
中小企業では、事業承継のタイミングで役員を入れ替えるケースが多いですが、役員の任期が長いと、後継者へのスムーズなバトンタッチが難しくなることもあります。

リスクの例
後継者を社長にしたいのに、既存の役員の任期が長すぎて交代が難しい。
会社の方針が変わっても、過去の経営陣が長く残ることで新体制への移行が進まない。

対策
後継者の登用計画に合わせて、役員任期を設定することが重要です。
「特定の役員だけ任期を短縮する」「業務委託契約に切り替える」といった柔軟な対応を検討するのも一つの方法です。

役員の任期を決める際のポイント

1. 会社の実情に応じた任期設定をする
オーナー企業や小規模会社では10年でも問題になりにくい。
一方、株主構成が変動する可能性がある会社では、短めの任期が望ましい。

2. 定款や役員規程に「解任の正当な理由」を明記する
「業務遂行能力の欠如」「経営方針との不一致」など、一定の条件を満たせば解任できるようにする。

3. 定期的な役員評価制度を導入する
役員の業務状況を見直し、適格性をチェックできる仕組みを整える。

10年の任期が本当に適切か?

役員の任期を10年にすることは、手続きの手間を減らし、コスト削減につながる一方で、役員解任のリスクや経営の硬直化といったデメリットもあります。
役員の任期を決める際は、以下の点を慎重に検討しましょう。

・ 会社の状況に合わせて、適切な任期を設定する。
・ 定款や役員規程で、解任の条件を明確にしておく。
・ 定期的な業務評価制度を導入し、役員の適格性をチェックする。

「長期任期=安定」ではなく、適切な管理体制を整えることが重要です。
10年という長い期間、思わぬトラブルが起こる可能性もあるため、慎重に検討しましょう。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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