増資

募集株式の払込金額の決め方と算定方法について解説

募集要項

会社が資金調達のために新たに株式を発行する際、「募集株式の払込金額またはその算定方法」 を明確に定めることが会社法で義務付けられています(会社法199条1項2号)。
しかし、実際にどのように設定すればよいのか、どんな方法があるのかについては、会社ごとに異なる事情を踏まえながら慎重に決める必要があります。
今回は、募集株式の払込金額の決め方と算定方法の基本 について解説していきます。

募集株式の払込金額とは?

募集株式の払込金額とは、新たに発行される株式を引き受ける者(投資家など)が支払う金額のことを指します。
会社は、1株あたりの払込金額を具体的に設定するか、あるいはその算定方法を定めることが求められます。

例えば、以下のような形で定めることが一般的です。

具体的な金額を記載する場合

例:「募集株式の払込金額 1株につき金1万円」

算定方法で定める場合

例:「募集株式の払込金額 1株につき金100万円を60で除した金額」
(総額100万円を60株で分割する場合)

決定のポイント

・1円未満の端数が生じても問題なし(出資者ごとに1円未満の端数が発生しなければOK)
・算定方法による記載も可能(端数処理が必要な場合に有効)

払込金額の算定方法の具体例

募集株式の払込金額は、会社の状況に応じて以下のように算定されます。

(1) 固定金額を設定する方法(基本形)

「1株につき○○円」という形で、具体的な金額を事前に決めておく方式です。
この方法を使うと、1株あたりの価格・発行する株数・会社が調達する資金の総額が明確になります。
・ メリット:シンプルで分かりやすく、株主にとっても予測しやすい。
・ デメリット:あとから株数を調整しにくい

例:「募集株式の払込金額:1株につき金10,000円」

(2) 総額を決めて株数で割る方法(調整しやすい方式)

会社が調達したい金額(総額)を先に決めておき、その金額を発行株数で割るという方法です。
募集株式の払込金額は、1株あたりの金額を直接定める方法だけでなく、発行総額を定めて、株数で按分する方法です。
例えば、1株あたりの払込金額を細かく設定する必要がある場合、この方法が用いられます。

例:「募集株式の払込金額:1株につき金120万円を80で除した金額」

この方式には、次のようなメリットがあります。
この方式が使われるケース
1. 総額が決まっていて、株数を後から決めたい場合
例えば、「1,000万円を調達したい」と決まっている場合に、先に総額を決めておけば、出資者の状況に応じてあとで株数を調整できます。

2. 1株の金額がキリの悪い数字になる場合
例えば、会社の評価額に基づいて計算すると 「1株=97万8563円」 になってしまうことがあります。
このままだと計算しづらいので、総額を決めて株数で割る方式を使えば、株数を調整してキリのいい金額にしやすい というメリットがあります。

・メリット:1株の金額を調整しやすい、株数の設定を後回しにできる
・デメリット:最終的な株数を決めるまで計算が確定しない

この方式は、特に 払込金額の総額を一定にしたい場合や株式数を均等に分割する際に端数が生じる場合に有効です。
なお、募集事項の決定時点で株数を必ず確定させる必要があるため、株数未確定の状態では採用できません。

(3) 公開会社における特則(ブックビルディング方式)

公開会社が、取締役会の決議で募集事項を定める場合、市場価格のある株式については、「公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定方法」を定めることができます(会社法201条2項)。これにより、例えばブックビルディング方式(投資家の需要状況を見ながら価格を決める方式)を利用することが可能になります。

ブックビルディング方式
ブックビルディング方式とは、投資家からの需要に応じて株価を決定する方法です。
証券会社などが投資家に対して仮条件(例:1株3,000円~3,500円)を提示し、需要を集めたうえで最終的な払込金額を決定します。

手続きのご依頼・ご相談

募集株式の払込金額は、会社の資金調達の目的や市場の状況に応じて適切に決定することが重要です。
具体的には、以下の3つの方法があります。

・ 固定金額方式:1株あたりの払込金額をあらかじめ決める(シンプルで分かりやすい)
・ 算定方法方式:総額を決めて株数で割る(株数が確定していない場合に有効)
・ 市場連動方式(ブックビルディング方式)(公開会社のみ):市場の需要に応じて決定

会社の状況に応じた最適な方法を選択し、適切な払込金額を設定することが求められます。
特に非公開会社の場合、適正な株価を設定しないと少数株主の利益を損なう可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
募集株式発行手続きや会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

ご相談・ご依頼はこちら
お問い合わせ LINE

ご相談・お問い合わせはこちらから