新株予約権(SO)

従業員退職時の新株予約権の取り扱い、事例別対応と手続き

付与した従業員が退職した場合の新株予約権の取扱いについて

新株予約権は、従業員へのインセンティブとして重要な役割を果たします。
しかし、従業員が退職した場合、その新株予約権の取り扱いについては契約内容や会社の方針に応じて慎重な判断が求められます。
自動消滅、譲渡、回収・再付与など、適切な対応を取らなければ法的トラブルを招く可能性もあります。
本コラムでは、退職時の新株予約権の取り扱いを事例別に解説し、必要な手続きや実務上の注意点を徹底的に解説します。

まず確認すべき「契約内容」と重要ポイント

新株予約権の取り扱いは、発行要項や付与契約の内容に大きく依存します。
退職時にどのような対応を取るべきかは、契約内容を確認することで判断できます。

確認すべきポイント

行使条件
・「従業員であること」が行使条件に含まれているか。
・退職時に自動消滅する規定があるか。

譲渡の可否
・契約書に譲渡禁止条項が記載されているか。
・条項がない場合、譲渡には株主総会または取締役会の承認が必要となるか。

権利消滅または回収の条項
・退職時に自動消滅する規定があるか。
・権利の回収が可能か。

ケース別対応方法

ケース1: 自動消滅の規定がある場合
契約内容: 新株予約権の行使条件に「従業員であること」が記載され、退職時に自動消滅する規定がある場合。
対応:退職時点で新株予約権は失効します。
手続きは不要ですが、退職者に消滅を通知する書面を発行しておくとトラブルを防げます。
注意点:消滅条件が従業員に十分周知されているか確認する。

ケース2: 自動消滅の規定がない場合
契約内容: 新株予約権が退職後も保持される場合。
対応:譲渡、回収、または再付与のいずれかを検討します。
譲渡の検討:株主総会または取締役会の承認を経て、退職者から別の従業員または第三者に譲渡可能です。
回収と再付与:回収後、別の従業員に新株予約権を再付与します。

ケース3: 譲渡禁止条項がある場合
契約内容: 譲渡禁止条項が記載されており、新株予約権を他者に譲渡できない場合。
対応:退職者との合意に基づき、権利を回収。
回収後、新たに別の従業員に再付与する(付与決議必要)。
付与条件や総数に変更がある場合は、取締役会(または株主総会)での承認と登記手続きが必要。

手続きの流れと具体例

1. 契約内容の確認
発行要項や付与契約を確認し、退職時の対応方針を明確化します。
行使条件、自動消滅、譲渡制限の有無を重点的に確認します。

2. 譲渡を行う場合
株主総会または取締役会で譲渡を承認。
譲渡契約書を作成し、当事者間で締結。

3. 回収を行う場合
退職者との間で新株予約権の回収合意書を締結。
権利消滅を証明する書類を作成。
会社内部で権利の消滅を記録。

4. 再付与を行う場合
取締役会(または株主総会)で新たな付与を決議。
新たな付与契約を締結し、別の従業員に新株予約権を割り当て。
再付与が総数や条件に影響を与える場合、登記変更が必要。

注意点と実務アドバイス

1.契約内容を明確化
新株予約権を発行する際に、退職時の取り扱いを契約書で明記しておくことが重要です。

2.公平性の確保
特定の従業員に対する対応が他の従業員と異なる場合、株主や従業員からの不満を招かないよう慎重に対応する必要があります。

3.適切な記録の管理
回収や譲渡、再付与に関する合意書や取締役会議事録を適切に保管しておくことで、後のトラブルを回避できます。

4.専門家の活用
複雑な契約条項や手続きが絡む場合は、司法書士や弁護士に相談し、法的リスクを最小限に抑えた対応を進めることをお勧めします。

手続きのご依頼・ご相談

従業員退職時の新株予約権の取り扱いは、契約内容を正確に把握することから始まります。
ケースごとに適切な対応を取ることで、従業員とのトラブルを回避し、会社の利益を守ることができます。自動消滅、譲渡、回収・再付与などの選択肢に応じた手続きを慎重に進めましょう。
新株予約権の処理についてお困りの場合は、専門家に相談することで、スムーズかつ適法に対応することが可能です。

会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

ご相談・ご依頼はこちら
お問い合わせ LINE

ご相談・お問い合わせはこちらから