取得条項付株式と全部取得条項付株式の違いをわかりやすく解説
取得条項付株式と全部取得条項付株式の違いをわかりやすく解説
権利の内容が異なる株式である種類株式は、投資家の属性に合わせて柔軟な株式発行が可能となるため、資金調達がしやすいというメリットがあります。
このコラムでは、会社法で規定されている9つの種類株式のうち、「取得条項付株式」と「全部取得条項付株式」の違いについてわかりやすく解説していきます。
取得条項付株式とは
「取得条項付株式」とは、新株の発行や株主の死亡などの一定の事由が生じた場合に、会社側からの一方的な意思により、株主から株式を買い取ることができる株式のことです。
普通株式の場合、当該株式を会社が買い取るためには、株主の同意および買取価額の合意が必要となります。
一方、取得条項付株式であれば、一定の事由を条件として、会社側からの意思のみで強制的に株式を買い取ることができるため、資金調達や事業承継などさまざまな場面で用いられます。
なお、同じ種類株式で「取得請求権付株式」という株式もありますが、こちらは株主が会社に対して買取を請求できる内容になっており、投資家にとってメリットの大きい株式となっています。
全部取得条項付株式とは
「全部取得条項付株式」とは、株主総会の特別決議によって当該株式の全部を取得できる内容の株式です。
個々の株主の同意を得ることなく全ての株式を取得できるので、少数株主の排除(スクイーズアウト)や100%減資、敵対的買収に対する防衛策などの場面で活用されます。
なお、株主から株式を取得する際には、金銭や種類株式、社債、新株予約権などを対価として与えることも多いですが、対価なしで設定することも可能です。
取得条項付株式と全部取得条項付株式の違い
取得条項付株式は、一定の事由発生を条件として会社の意思のみで株式を買い取ることができますが、全部取得条項付株式の場合、株主総会の特別決議を経なければ株式を買い取ることができません。
株式を取得する面だけで考えれば、株主総会の特別決議が不要な取得条項付株式の方が会社に有利だと考えられますが、既存の普通株式を取得条項付株式に変更する場合は株主全員の同意が必要となるため、状況に応じて使い分ける必要があるでしょう。
手続きのご依頼・ご相談
取得条項付株式と全部取得条項付株式は同じ種類株式であり、株主から強制的に株式を買い取れる内容になっている点で共通していますが、それぞれ買い取れる条件や発行手続きに違いがあります。
少数株主の排除(スクイーズアウト)により会社の意思決定を迅速に行いたい場合などに種類株式を活用するなど状況に応じた使い分けをします。
会社法人登記に関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。