その他

会社代表者等の住所の非表示措置について、令和6年施行

会社代表者等の住所の非表示措置について

 

商業登記の役割と代表者住所の公開について

商業登記は、企業や法人が登記すべき事項を公示することで、会社法人の信用を維持し取引の安全を図る役割などを担っています。企業の法的な地位や責任を明確にすることができるので、企業とその取引先、顧客、そして社会全体にとって信頼性と透明性を提供する重要な役割を果たしています。
商業登記においては、会社代表者の住所情報は登記すべき事項とされていますので一般に公開されています。会社法においては、株式会社の代表取締役(同法911条3項14号)、同代表執行役(同項23号ハ)、合名会社・合資会社の社員の住所(同法912条5号、9135号)、合同会社の代表社員・職務執行者の住所(同法914条7号・8号)に定められており、本店所在地において登記しなければならないとされています。
それらの事項に変更があった場合も同様となります(同法915条1項)。ほかにも、一般社団法人や一般財団法人の代表理事の住所など、登記しなければならないとされています。しかし、昨今、個人情報の保護やセキュリティの観点から、この点について問題視されるようになってきました。

代表者の登記住所公開に関する懸念点

法人代表の住所公開に対する主な懸念点は以下のとおりです。

①なりすまし被害
②ストーカーなどの付きまとい
③個人情報の悪用
④抵当権など、個人情報の勝手な閲覧

 

2022年9月改正

2022年9月の法改正により、商業登記規則等の一部が改正され、法人の代表者がDVやストーカーの被害者である場合、その旨を申請すれば、代表者の住所は登記謄本に表示されないという措置が施行されました。

商業登記規則の一部改正

一定の要件の下、株式会社の代表取締役、代表執行役及び代表清算人の住所を登記事項証明書及び登記事項要約書において一部表示しないこととする措置を講ずることができることとする改正を行う。
②電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行規則の一部改正
上記1の措置を講じた株式会社について、登記情報提供サービスにおいても同様の措置を講ずることとする改正を行う。
改正の内容によれば、登記情報に公開される株式会社の代表取締役などの住所について、紙の登記とインターネット上の取得サービス(登記情報提供サービス)で取得できる登記の両方において、行政区画(市町村や東京都の23区など)までに限定することができるようになります。

2024年度改正案

上記2022年9月法改正は、個人情報保護の進展を示すものですが、現行の法人登記制度における個人情報保護はまだ十分とは言えません。
法人の代表者が自らのプライバシーを守るために、個別に対策を講じる必要があります。そこで、法務省は、個人情報保護政策の一環として、2024年度に新たな措置を実施する方針を打ち出しています。これにより、希望する法人代表者が自らの住所情報を非公開にすることが可能となります。具体的には、希望する法人代表者は、特定の手続きを経て自身の住所情報を非表示にすることができます。
法務省は2023年12月26日、商業登記における株式会社代表者の住所情報の一部非公開化を実現するための商業登記規則等改正案を公表し、この改正案に対する意見募集が行われています。

各団体の意見

 

経団連の経済法規委員会企画部会

経団連の経済法規委員会企画部会(大内政太部会長)は1月24日に意見を提出しました。意見内容は以下の通りです。
①省令改正の背景・趣旨
現行制度では、株式会社の代表者住所は会社法上の登記事項として公開されていますが、この制度がプライバシー保護の観点から問題があるとして、経団連などから改正の要望がありました。改正案では、一定の申し出を行った株式会社に限り、代表者の住所情報を市区町村まで表示することとされています。
②意見の概要
経団連は、改正案が会社の代表者のプライバシー保護だけでなく、新しい会社の設立を促進するうえでも極めて重要であるとして、速やかな施行を求めています。具体的には、次の3点を要望しています。
1. 住所の一部非公開化の対象者の拡大。
2. 住所非表示措置の申し出の機会の拡大。
3. 登記官の適切な措置に関する確認。

東京司法書士会

また、東京司法書士会においても、法改正に対しては賛成であるとし、以下の点について意見を述べています。
①住所が表示された登記事項証明書等の交付及び資格者代理人がオンライン申請により住所を確認できる仕組みの新設について
②住所非表示措置の申出の時期について
③住所非表示措置の対象の範囲について
④補正の促し等の事前の周知について
⑤代表取締役等住所非表示措置の非表示期間について
⑥本店所在地における実在性について
⑦第三者からの申出による住所非表示措置の終了について
⑧帳簿等の閲覧請求について

東京司法書士会では、代表取締役等住所非表示措置の非表示期間に2年程度の期間制限を設け、期間経過後も非表示措置を希望する場合は、更新の申出ができるような措置を講ずるべきであるとしています。また、代表取締役等のプライバシー保護を考えれば、そのような登記申請の時期にかかわらず、いつでも申し出ることができるようにすることが望ましいとしています。

日本弁護士連合会

さらに、日本弁護士連合会では、2023年(令和5年)12月26日に公表された「商業登記規則等の一部を改正する省令案」について、プライバシーの保護という趣旨には賛成するものの、弁護士が職務上必要な場合、代表取締役等の住所を迅速に閲覧すること(オンラインにより住所情報を取得することを含む。)を可能とするための措置が不可欠であり、当該措置を本改正案の施行と同時に実現させるよう意見をしています。

手続きのご依頼・ご相談

本日は会社代表者等の住所の非表示措置について解説しました。
概要など判明次第、改めて情報公開をいたします。

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