会社分割における債権者保護手続きを解説、不要となる場合など
会社分割における債権者保護手続
会社分割とは
会社分割とは、株式会社又は合同会社が事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後、承継会社又は新設会社に承継させる組織再編の一形態です。会社分割は、既存の株式会社又は合同会社が承継する吸収分割と、1又は2以上の株式会社又は合同会社が新たに設立した会社に承継させる新設分割の2つに分かれます。
会社分割と合併の大きな違いは、合併においては被承継会社が消滅するのに対し、会社分割においては分割会社が存続するという点です。
債権者保護手続き
会社分割においては上述のとおり会社が存続するので、債権者には悪影響がない場合もあります。しかし、会社が不採算事業の権利義務のみを分割するのか、優良事業の権利義務のみを分割するのか、会社自体が経営不振に落ちいっているのかなど、その状況によっては、債権者に不利益を及ぼす場合があります。ゆえに、会社法では、以下の3つの規律によって債権者の保護を図っています。
②各別の催告を受けなかった債権者に対する連帯債務(会社法759条2項・3項・764条2項・3項)
③詐害的株式分割に対する残存債権者の直接請求権(会社法759条4項・764条4項)
会社分割の場合、異議を述べることのできる債権者は以下の通りです。
②分割会社が、分割対価として受けた承継会社。新設会社の株式を株主に交付する場合(人的分割)(会社法789条1項2かっこ書・758条8・810条1項2かっこ書・763条1項12)
③承継会社の債権者(799条1項2)
債権者保護手続きが必要な場合と不要な場合
会社分割の場合、分割会社と承継会社の2つの会社にそれぞれ債権者がいるかを検討します。
まず、分割会社の債権者に対しては、承継会社・新設会社が分割会社の債務を免責的に承継する場合であっても、分割会社が重畳的債務引受や連帯保証を行う場合、債権者異議手続は不要になります。しかし、重畳的債務引受や連帯保証を行わない場合は債権異議手続が必要になります。簡単にいえば分割後に分割会社に異議を述べることができなくなった債権者には債権者保護手続を要するということになります。
人的分割を行う場合
人的分割とは、分割対価として承継会社の株式を分割会社の株主に割り当てることをいいます。この場合、分割会社の資産が減少することになるので、残存株主を保護する必要があります。従って人的分割を行う場合は、債権者異議手続は、分割会社・承継会社共に全債権者が債権者保護手続の対象となります。
そして、承継会社の債権者保護手続きは省略することはできません。会社分割における承継会社は、合併における存続会社と類似の立場に立つため債権者を保護する必要があります。
債権者保護手続きの流れ
債権者保護手続の流れは以下の通りです。
①官報公告
②個別催告の発送
又は
①官報公告
②日刊新聞公告又は電子公告(定款に定めている場合)
③異議を申し立てられた際の対応
官報公告に求められる記載内容は以下の通りです。
-会社分割を行う企業の商号と住所
-会社分割を行う企業の計算書類
-資本金・負債の変動金額
-会社分割に対して異議を申し立てられる旨
債権者保護手続の期間は債権者が異議を述べる期間を設ける必要があるため最低1ヶ月となります。
そのため、効力発生日に向けて債権者保護手続をスケジュールに組み込み、段取りよく手続きを行う必要があるでしょう。
手続きのご依頼・ご相談
本日は会社分割における債権者保護手続について解説しました。
会社分割・組織再編手続きに関するご依頼・ご相談は司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。