属人的種類株式とは?株ではなく株主に付く権利
属人的種類株式とは?株ではなく株主に付く権利
属人的種類株式とは?
属人的種類株式は、株主個人に依拠する権利のある株式です。
この株式に関しては、以下3つの権利に関し、持株数にかかわらず株主ごとに異なる取り扱いができることが会社法に定められています。
ただし、この設定をすることができるのは非公開会社に限られます。
・残余財産の分配を受ける権利
・株主総会における議決権
以上において個別に設定できますが、余金の配当権と残余財産分配権をまったく与えないという取り決めはできません。
種類株式と属人的種類株式の違い
種類株式と属人的種類株式の大きな違いは、登記が必要がどうかです。
種類株式は当然ながら登記が必須ですが、属人的種類株式は定款に記載するのみです。
つまり、属人的種類株式は社の履歴事項全部証明書に記載されないことになりますので、設定しても第三者にはわかりません。
種類株式は、誰が保有しても権利内容に変化はありませんが、属人的種類株式はその株主特有の特徴を持ちます。
もし社長の株式だけ1株で100個の決議権を持つと定めた場合、もし社長の株式が他者に譲渡されたとしても、その権利まで他者に譲渡されるわけではありません。
このように、特別な個別設定ができる分、属人的種類株式を設定する際には定款変更に際して特殊決議という厳しい決議が要件となっています。
どのような状況で活用されるのか
実は属人的種類株式は、非公開会社の事業承継によく活用されています。
たとえば、社長が自身の経営者としての引退を考え、子息に任せたいものの、子息が未熟で重大な判断をさせるのは危険だと認識している場合です。
ここで、普通に株式を子息に譲渡すると、経営決断はすべて未熟な子息がすることになりますが、属人的種類株式を活用すれば解決します。
現社長の保有する株式を1株につき議決権200個とすると、普通株式100株で現社長の議決権20,000個です。
この株式99株を子息に譲渡しても子息の議決権は99個で、現社長が全議決権の3分の2を掌握、経営上の重要な事項は現社長の判断で決議する状況となります。
ほかには、議決権の過半数を社長が保有している状況で、なんらかの事情で社長の判断能力が失われた場合、通常であれば株主総会で決議できなくなり経営が立ち行きません。
事前に、このような事態には後継者が保有する株式の議決権を3倍にするなど、後継者の議決権が過半数になるような定款で定めておけば安心です。
このように、社の存続や円滑な経営のために、属人的種類株式で議決権を設計しておくことが可能です。
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本日は属人的種類株式について解説しました。
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