役員変更 / 登記申請手続(各種)

会社の取締役が行方不明の場合の退任手続きについて解説



会社の取締役が行方不明の場合の退任手続きについて解説


会社の取締役に退任してもらう方法

会社の取締役が音信不通で行方不明の場合、会社の業務にも支障が出ます。
役員の退任事由は主に「辞任」「任期満了」「解任」となりますが、取締役が音信不通の場合、辞任していただくことは難しいため「任期満了」または「解任」による退任手続きをとることとなります。

任期満了による退任

取締役の任期は、定款に定めた期間となります。任期は概ね2年~10年とする会社が多いので、失踪した取締役の任期が残りすくないのであれば、任期満了を待っても良いのですが、残り任期が長い場合については、当該任期中の取締役について、定款に記載された任期を短くすることによって、退任させることが可能です。
手続きとしては、定款変更となりますので、株主総会の特別決議で当該取締役の任期を短くする決議を行います。
なお、特例有限会社や合同会社の場合、役員の任期はありませんので、任期満了による退任又は任期を短縮することによって退任させる方法は使えません。

株主総会で解任する

取締役は株主総会の普通決議で解任ができると規定されています(会社法第339条1項)。
任期中の役員の解任は、正当な理由がない場合は損害賠償の対象になり得ますが、失踪で業務を行えない事態であれば正当な理由とされる可能性は高いと考えます。

株主総会で否決された場合

もしも解任の決議が否決された場合(議決権の過半数を抑えていない場合など)には、裁判所に対して解任請求をすることが考えられます。
会社法上、役員の職務執行に不正または重大な法令もしくは定款違反があったにもかかわらず、株主総会での解任決議が否決された場合は議決権の3%以上を六カ月前から引き続き保有する株主は、その株主総会から30日以内であれば、会社及び当該役員を被告とする解任の訴えを裁判所に提起することができると定めれています(会社法854条)。

会社法854条
役員(第329条第1項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第323条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
一 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
二 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該株式会社である株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
2 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。


法務局から本店への通知

役員の全員が解任された場合、法務局から当該会社の本店に役員の解任登記がされた旨の通知がされる取り扱いとなっています。
唯一の取締役(取締役が1名)の株式会社において、当該取締役を解任した場合、「役員全員の解任」となるため法務局より通知が届くことになります。
もしも、この登記に正当な理由がなければ、反論されることが予想されますが、取締役が行方不明なのであれば、通知を受け取ったことによる争いが起こる可能性は低くスムーズに解任が可能でしょう。

新しい取締役を決める

行方不明の役員を解任し、新しい取締役を選定する場合、株主総会普通決議で選任します(会社法第329条1項)。
唯一の取締役を解任する場合は、当然後任がいなければ解任することは出来ませんので、解任と選任はセットで行います。
唯一の取締役を解任し新たな取締役を選任する場合、株主総会をひらきますが、本来、株主総会は取締役が招集します。
しかし、唯一の取締役が行方不明の会社においては、招集する取締役がいないため、この場合は、株主の全員の同意で招集の手続きをせずに開催をすることが考えられます。
株主全員の同意が得られない場合は、少数株主の権限で一時取締役の選任を裁判所に申し立てし、招集をすることが考えられます。

手続きのご依頼・ご相談

本日は行方不明の取締役がいる場合において当該役員を退任させる方法をご紹介いたしました。
手続きのご依頼やご相談は永田町司法書士事務所までお問い合わせください。



本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

債務整理・商業登記全般・組織再編・ファンド組成などの業務等を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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