事業譲渡契約書の記載事項と注意点を解説
事業譲渡の契約書で気を付けたいこと
細かく明確化したい事業譲渡契約書
事業譲渡においては合併のように権利義務関係を包括的に移転するのではなく、個別に承継します。
とある1つの事業を譲渡するといっても、その事業で使われているものや権利義務関係が自動的にすべて移転するわけではありません。
たとえば、事業に使われている工場や営業所は移転するのか、複数ある店舗は据えて移転するのか、複数ある商品やブランドはすべて移転するのか、携わってきた従業員も転籍させるのか、ブランド名や屋号は移転するのか、長年の仕入れ先や得意先などの取引先との関係も移転するのか、個別に決めます。
特に取引先への弁済義務や借入金を移転するには、あらかじめ債権者の承諾を得なくてはなりません。
また、従業員を転籍させたい場合も、一人ひとり個別に同意を得る必要があります。
そのため、こうした内容を確認しながら、契約書に一つひとつ落としていくことが大切です。
また、譲渡企業と譲受企業のいずれのリードで契約書を作成するかで、他方にとって不利益な条項が盛り込まれる可能性もあります。
作成された事業譲渡契約書は、合意の署名をする前に、今一度、しっかりと一つひとつ内容を確認しましょう。
事業譲渡契約書の主な記載事項と注意点
事業譲渡契約書に主に記載される内容と、その注意点を見ていきましょう。
本件事業の譲渡
譲渡日と譲渡対象となる事業を明確にします。
譲渡財産
譲渡対象となる資産と債務はすべて個別に取り決めることが必要です。
契約書には、承継資産、承継債務としてそれぞれ目録を作成し、個別に明記することが重要です。
不動産や物、従業員や負債、知的財産権や特許などの権利といった具体性のあるものをはじめ、事業を行うためのノウハウや顧客情報なども譲り渡すのであれば明記する必要があります。
債務等の負担
譲渡事業に関する債務を誰が負担するのかも、契約書に明記します。
「○月×日までは譲渡企業の負担とする」といった形で期日とともに、いずれがいつまで負担するのか取り決めておきましょう。
従業員の取り扱い
従業員も承継するには、転籍又は退職後再雇用という手続きが必要です。
従業員には個別に30日前には予告を行い、同意を得ることが求められます。
譲渡価額と支払方法
事業譲渡対価の総額を明記し、どのような形式で授受するのかも記載しておきます。
支払方法は銀行振込が一般的です。
取締役会及び株主総会での承認
取締役会の決議で承認を経たこと、株主総会の承認が必要なケースではその承認を得たことを、承認期日などとともに明記します。
移転手続
譲渡対象資産の引き渡しや移転日を明記します。
一般的には譲渡日と引き渡し日や移転日は同日です。
競業避止
事業譲渡後、譲渡企業が同一又は類似する事業を行うことを禁じる条項です。
禁止するエリアや期日を当事者間で設定しておくことで、後のトラブル防止につながります。
譲り受けの条件
契約締結後、譲渡日まで事業の価値に影響をもたらす事由が発生していないなど、譲受企業が不利益を被らないように条項を入れます。
補償
契約上の義務違反により、それぞれが損失を被る事態が起きた場合に、損失を補償する旨を具体的に定めておくことも必要です。
管轄・準拠法
万が一、事業譲渡を巡り紛争が起きた場合にどこの裁判所で争うのか、契約書がどの国の法律に準拠して解釈されるかを明記します。
まとめ
本日は事業譲渡契約書に記載するべき項目とそのポイント解説をしました。
事業譲渡や組織再編、商業登記に関するご相談は永田町司法書士事務所までお問い合わせください。