代表権付与の登記_取締役2名のうち代表権を有する取締役1名が辞任する場合【法定清算人辞任についても解説】
代表権付与の登記_取締役2名のうち代表権を有する取締役1名が辞任する場合【法定清算人辞任についても解説】
取締役及び代表取締役の辞任と地位
株式会社と取締役の関係は、委任に関する規定に従うため、取締役はいつでも自由に辞任することが出来ます(会社法330条)。
代表取締役は、前提として取締役である必要があるため、取締役を辞任すれば代表取締役は自動的に退任となります。
取締役と権利義務
取締役が退任することにより、会社法や定款で定めた取締役の員数が欠ける場合は、後任者が選任されるまで当該役員は役員としての職務を行う権利と義務があります(会社法第346条1項)。
例えば、取締役AとBの2名がいる会社において、定款に「取締役は2名以上とする」などと定めた場合は、取締役は辞任することは出来ません。
この場合、後任の取締役を選任するか定款の規定を「取締役は1名以上とする」又は「取締役は2名以内とする」などと文言を変更する必要があります。
残存する取締役と代表権付与
取締役会非設置会社において、取締役の中から代表取締役を定めた場合において、当該代表取締役が欠けた後の代表権の帰趨については、会社法349条1項本文の射程は及ばず、当然には、他の残存取締役の代表権は回復しないという見解(代表権剥奪消滅説)が、通説・登記実務となります(商業登記ハンドブック_第4版393~4頁)。
取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
代表権が復活(付与)されるのは定款の規定次第
代表権復活(付与)されるか否かは定款の規定次第となります。
具体的には下記のような定め方が必要です。
代表権が当然に付与される場合の定款規定
上記のような定めがあった場合、これは「取締役が3名のときは代表取締役を互選で定めるが2名の場合は残存役員 は当然に代表取締役になる」趣旨と解されるので、当該定款の規定に従い残存する他の取締役が当然に代表取締役となることが出来ます。
この場合、登記申請時には定款規定に基づく代表権付与であることを証するため 定款が添付書面となります(商業登記規則61条1項)。
代表権は当然には付与されない場合の定款規定
上記のように定款に役員の員数を「当会社に取締役2名”以上”を置き~」と定めた場合は 常時2名必要で、代表取締役選定は、常に互選等によると解されます。
代表権付与は定款で選定した代表者と同じ扱い
代表者の選定方法は原則3つございます。
①株主総会で選任、②取締役の互選(又は取締役会)、③定款に基づく選定
そして、代表権復活(付与)は、定款の定めに基づく代表取締役選任という位置づけとなります。
重要なのは、代表権付与というのは役員の員数状況に応じて生じるものではなく、定款規定に基づくものであるということです。
代表権付与は、定款規定の賜物ともいえます。
代表清算人も規定は同じ
上述の規定は、解散後の代表清算人にも当てはまります(商業登記ハンドブック_第4版528頁)。
ここで疑問がでるのは、法定代表定清算人の場合はどうなのかということです。
結論としては、法定代表清算人を辞任しても当然には他の残存清算人には代表権の付与はありません。
理由は上述のとおりで、代表権の付与とは「定款で定める方法によって代表者を定めた」と解することにより復活を可能とさせているためです。
代表権付与は、定款規定を根拠としているのです。その証拠として、代表権付与の登記には必ず定款の添付が必要となります。
定款に上述した文言の記載はあるのか…これを確認をするためです。
確かに会社法483条1項ただし書に基づけば、法定代表清算人は否応なしに自動就任するため「定めた場合」には当たらないと考えることが出来ます。
清算人は、清算株式会社を代表する。ただし、他に代表清算人(清算株式会社を代表する清算人をいう。以下同じ。)その他清算株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
しかし、代表権というのは何度も申し上げるとおり当然には付与されないのが大前提となります。
復活する場合は、その定款の定め方次第ということになりますので注意が必要です。
もっとも、会社を立ち上げる時から清算に関する規定を定める会社はごく少数にすぎません。
さいごに
本日は代表権付与に関することについてお話させていただきました。
代表権の付与は定款規定次第となります。
役員に関するお手続き・ご相談は、永田町司法書士事務所までお問い合わせください。