役員選任懈怠の場合の手続と議事録の記載方法,株主総会開催を忘れていた場合の対応【権利義務取締役】
役員選任懈怠の場合の手続と議事録の記載方法,株主総会開催を忘れていた場合の対応【権利義務取締役】
役員の任期
株式会社の取締役の任期は、原則選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第332条1項)。
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
非公開会社は、定款の定めによって任期を10年に伸長することができます(会社法第332条2項)。
役員の改選を忘れていた場合
事業年度が毎年4/1~翌年3/31までの会社であれば、5月~6月に定時株主総会を開催する場合が多いかと思います。
この定時株主総会で、役員の改選決議を失念していた場合や、そもそも定時株主総会の開催を行わなかった場合はどうなるのでしょうか
権利義務役員
役員は任期が満了すれば当然に退任します。
しかし、当該役員が退任することにより、会社法や定款で定めた役員の員数が欠ける場合は、後任者が選任されるまで当該役員は役員としての職務を行う権利と義務があります(会社法第346条1項)。
このように、任期満了となっても退任できず、後任者が選任されるまで、なお役員として権利義務を有する役員を権利義務役員といいます。
どうせ、同じ役員に続投してもらうのだから手続をせずにこのままにすればいいのかと思う方もいるかもしれませんが、この状況を放置しつづけると登記懈怠となり過料に処せられる場合がございますので、これを解消をする必要がございます。
株主総会を開催する
定時株主総会で改選手続をしていなかった場合やそもそも定時株主総会を開いていなかった場合、いずれにしても今から株主総会を開催して役員の改選手続を行う必要がございます。
選任懈怠の場合の議事録の記載方法
定時株主総会は開催したが役員選任をしていなかった場合
この場合は、議事録に記載する内容は下記のように記載をいたします。
議長は、取締役全員が令和●年●月●日付定時株主総会終結の時をもって任期満了となっているため、改めて下記の者を取締役として選任したい旨を説明し、その承認を求めたところ、満場一致をもってこれを承認可決した。なお、被選任者は席上その就任を承諾した。
取締役:永田 太郎
取締役:永田 花子
そもそも定時株主総会を開催していなかった場合
この場合の記載方法は下記のとおりです。
議長は、取締役全員が令和●年3月31日終了の事業年度にかかる定時株主総会の開催されるべき満了日、すなわち、令和●年6月30日をもって任期満了退任したので、改めて下記の者を取締役として選任したい旨を説明し、その承認を求めたところ、満場一致をもってこれを承認可決した。なお、被選任者は席上その就任を承諾した。
取締役:永田 太郎
取締役:永田 花子
登記官はいつ役員の任期が満了したのか不明のため、議事録にはその記載をする必要があります。
役員改選日付に注意
後任者(同一人物であったとしても)の就任日は、そのまま選任された日となります。
任期切れとなっている役員の退任日には注意が必要です。
例えば、事業年度が毎年4/1~翌年3/31の会社であり、役員の任期が「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」としていた場合役員の任期は、選任後[仮に令和1年5月10日選任の場合〕は、2年以内に終了する事業年度のうち[=令和3年5月10日までに終了する事業年度=令和3年3月31日〕最終のものに関する定時株主総会終結時[3月31日から3か月以内に開催される総会の日〕となります。
もしも株主総会が開かれていない場合は、開かれるべき満了日(上記の例でいえば3月31日から3か月目の6月30日)に任期満了退任となります。
後任者の選任された日に任期切れの役員が退任するわけではありませんので注意が必要です。
登記必要書類
選任懈怠後の役員改選登記手続において必要な書類は下記のとおりです。
・株主リスト
・就任承諾書
・印鑑証明書
・定款
一般的な必要書類ですが、これらはケースバイケースで不要となるものもあります。
会社の実情にあわせて添付書類を確認の上、登記所に提出してください。
さいごに
本日は役員の選任懈怠をしていた場合の役員改選手続やその議事録の記載内容についてご説明しました。
役員改選手続を失念していた場合早急に解消する必要がございます。
株主総会議事録の作成から役員変更登記に関するご相談など永田町司法書士事務所までお問い合わせください。