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相続をしないという選択 -法務担当者向け基礎知識-

マイナスの財産

相続財産というと、預金や土地、建物などのプラスの財産をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、例えば生前購入した土地や建物のローンがまだ残っている場合や、被相続人(亡くなられた方)が金融機関やサラ金業者などから借金をしていた場合、全てを相続すると、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も相続することになります。
プラスの財産だけを手に入れてマイナスの財産は要りませんと都合良くはいきません。

相続をしたくないとき

では、亡くなられた方の財産を調査したらマイナスの財産が多く、どうしても相続したくない場合はどうすればいいのでしょうか?
民法には、相続放棄という制度が存在しています。「私は亡くなられた方の相続はしません」ということです。この相続放棄をすることによって、マイナス財産の相続をすることを回避することができます。

相続人となる人

人が亡くなると相続が開始しますが、相続人となる人は
1.相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認(民法920条)
2.被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認(民法922条)
3.相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄(938条)
のいずれかを選択することができます。ただ、この単純承認以外を選択するためには、相続人は、自己のために相続が開始したことを知ってから3か月以内にそれぞれ手続きをすることが必要です(民法915条)。

相続放棄

限定承認については、別の回で紹介させていただくとして、相続財産がプラス財産よりも、マイナス財産の方が明らかに多い場合は、相続放棄という手段を選択することが賢明でしょう。
この相続放棄の手続きをすることによって、その者はその相続に関しては最初から相続人とならなかったものとみなされます。
従って、プラス財産もマイナス財産も一切相続することはありません。

相続放棄手続

さて、相続放棄をしようとする者は、その旨を被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述する必要があります。相続放棄申述書という書類に必要事項を記入して家庭裁判所に提出します。提出の方法は2つあり、直接、家庭裁判所に持参して提出するか、家庭裁判所へ郵送で送付する方法の2種類です。
相続人の中に未成年者がいることもあると思いますが、この未成年者が相続放棄申述書を家庭裁判所に提出する場合は、法定代理人(親権者など)が代理人となって申述書を提出します。

さらに、相続人となる人が、その未成年者と、未成年者の法定代理人である場合のケースで、未成年者の方だけが相続放棄をする場合には、利益相反行為となり、この未成年者には特別代理人の選任が必要となりますので、注意が必要です。

相続放棄にかかる費用

相続放棄にかかる費用としては、全部自分で手続きを行うとした場合、裁判所に収める手数料である収入印紙、切手代で大体2000円から3000円、必要書類となる戸籍謄本等の取得にかかる費用が、通常3000円程度、取得する戸籍謄本が多ければ1万円程度掛かりますが、合計で大体7000円程度あれば行えるでしょう。

相続開始前の放棄手続

被相続人が死亡したと同時に相続は開始されますが、相続開始の前に相続の放棄をすることは認められていませんので注意しましょう。
あくまでも、被相続人が死亡したことによって、相続が開始してからの手続きとなります。相続財産がマイナス財産しかないという方は相続放棄をするという選択肢がありますので参考にされてみてはいかがでしょうか。

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