民法総則 -法務担当者向け基礎知識-
民法総則とは
民法総則(みんぽうそうそく)とは、1040条を超える民法の条文の中の一部分の事を指します。
民法は、大きく5つの編に分けられているのですが、その中の最初に置かれている編となります。具体的には、民法の第1条~第174条の2までが民法総則となります。
民法総則には、第1章「通則」、第2章「人」、第3章「法人」、第4章「物」、第5章「法律行為」、第6章「期間の計算」、第7章「時効」までの全7章があります。
これらのそれぞれの章には、さらに節が入っているものもあり、内容の範囲が幅広くなっていきます。
権利濫用の禁止
民法総則とはいかなる原則に基づいているのか。民法の原則のひとつに権利濫用の禁止というものがあります。ここでは民法第1条の「権利濫用」について例を上げて解説してみたいと思います。
民法第1条第3項には「権利の乱用はこれを許さない」とあります。たとえ権利があり、それを行使しようとしても、その目的自体が社会的に見て妥当ではないと判断される場合、権利の行使自体が認められないとされているのです。
宇奈月温泉事件
権利濫用については有名な裁判があり、判例があるので、解説してみたいと思います。
「宇奈月温泉事件」といって、名前までついている裁判であり、大学の法学部生や、資格試験合格を目指して法律を学習している人であれば誰でも知っていると言われる程有名な裁判です。
富山県下新川郡(現黒部市)にある宇奈月温泉という温泉で起こった話なのですが、そこの温泉のお湯は、別の離れた温泉から、引湯管によって引かれていました。その引湯管が通っている土地を持ち主から買い取った方がいました。この買い取った人をAとします。引湯管はこの土地の一部分を通っていましたが、前の所有者からは引湯管を通すことの利用権を得ていませんでした。
新しい所有者のAは、温泉を経営しているBさんに対し、引湯管は土地の利用権を得ずに敷設されたのであるから不法占拠だと言ってその引湯管を撤去するように言ったのです。さらに、撤去しないのなら、周りにある荒れた土地と一緒に高額な値段で買い取るように要求したわけです。
しかも、当時の地価は、30円程だったにもかかわらず、2万円程度と言う巨額で購入するように迫りました。Bさんは当然の事ながら困る事になるわけです。なにせ引湯管は地面の下に埋まっているわけですし、移設するにも莫大な費用が掛かるからです。Bさんは撤去も買い取りも断りました。するとAが訴訟を起こしたのです。
この判決では、権利濫用禁止の原則により、Aの請求を退けたのです。この事からわかるように、自分の持っている権利だからと言ってなんでもかんでも通用するわけではないと言う事です。
おわりに
民法にはこのような原則が存在しているということを頭に入れて頂いた方が、一層理解しやすいのではないかと思い、民法総則の中の一例として上げさせて頂きました。
永田町司法書士事務所