増資の引受人が複数人いて押印揃うまで時間かかります。捺印済原本が存在しない状態でも登記できますか
【相談事例】増資の引受人が複数人いて押印揃うまで時間かかります。捺印済原本が存在しない状態でも登記できますか
申込割当方式と総数引受契約方式の違い
会社は募集事項を定めて募集株式(又は募集新株予約権)引受人に株式を発行して割り当てをすることが出来ます。
募集株式(又は募集新株予約権)発行の流れとしては、まず会社は会社法第199条などに定められた募集事項を決定して募集株式(又は募集新株予約権)の引受けの申し込みをしようとする者に対して募集事項を通知します。
この通知は、募集株式(又は募集新株予約権)の割当日の前日までにする必要があるため(会社法第243条3項参照)、株主全員の同意によって株主総会招集手続を省略した場合であっても、スケジュールとしては、最短でも2日以上必要となります。
他方、「総数引受契約」方式で行う場合は、当該割当通知が不要となるため1日で手続を完了させることが可能となります(会社法第244条1項)。
実務上は、割当先や割り当てる募集株式(又は募集新株予約権)の数がはじめから決定されているような場合は、総数引受契約を締結する方法でスキームが組まれます。
得にベンチャー企業などでは、タイトなスケジュールで手続きを進めなければならないことも多く、総数引受方式が採用されることが多いのです。
申込割当方式を使うメリット(代表者押印のみで手続き可能)
総数引受契約の締結又は申込み・割当てが完了して、割当日が到来することにより、引受人は株主(又は新株予約権者)となります。
総数引受契約方式の場合は、登記申請時に、引受人が押印済の総数引受契約書を法務局に添付書類として提出する必要がありますので、割当日が到来して、株主(又は新株予約権者)となっているにも関わらず、捺印が遅れているため登記が進められないというデメリットが生じる可能性があるのに対して、申込割当方式の場合には、登記実務上、募集株式(又は募集新株予約権)の引受けの申込みがあったことを会社代表者が証明した書類をもって代用することが認められています(登記研究664 平成15・5)。
よって、申込書に引受人の押印がなくても、会社代表取締役の法務局届出印の押印のみで登記手続を進めることが可能とされています。
引受人の人数が多い場合には、申込割当て方式を採用して募集株式(又は募集新株予約権)の発行手続きを行いましょう。