減資

債権者保護手続において賃貸保証金の返還債務は催告対象になるのか

債権者保護手続

資本金の額の減少(いわゆる減資)や合併等を行う場合、会社は債権者保護手続を行う必要があります。
債権者保護手続とは、原則として、官報による公告および知れたる債権者への各別催告が求められます。
しかし実務では、次のような疑問が生じます。

将来発生する可能性がある債権も、催告対象に含めるべきなのか。

特に問題になるのが、賃貸借契約における保証金の返還債務です。


賃貸保証金は「将来債権」

会社が賃貸人として不動産を貸している場合、賃借人から保証金を預かっていることがあります。

この保証金は、通常、賃貸借契約が終了したときか原状回復等の精算を行った後に返還されます。
したがって、減資の時点では、まだ返還義務が発生していない将来債権という位置付けになります。
このような場合、賃借人を「知れたる債権者」として扱うべきかが問題になります。

条文上は明確な基準がない

実は、この点については非常にお問い合わせが多いのですが、条文上明確な基準がありません。
減資の債権者保護手続は、債権者が減資等によって不利益を受けることを防ぐという趣旨の制度ですが、
どこまでを「債権者」に含めるかについて明確な線引きは示されていません。

そのため、将来債権も含めるべきという考え方もあれば、直ちに弁済が必要な債権のみ対象とすべきといった複数の考え方があり、定説があるとは言い難い状況です。

将来債権は対象外と考えることも可能

賃貸保証金の返還債務は、契約終了時に発生するため、現時点で弁済期が到来していないという点から、
債権者保護手続の対象に含めないという考え方も成り立ちます。

減資の手続において問題となるのは、「減資によって直ちに弁済が危険になる債権」であるという整理です。
この観点からは、保証金返還債務を含めないという判断もあり得ます。

実務では安全策を取ることも多い

もっとも、実務では、念のため催告対象に含めるという対応を取るケースも少なくありません。
ただし、その場合には注意が必要です。
賃借人は通常、自分が会社の「債権者」であるという認識を持っていません。
そのため、いきなり「債権者異議申述催告書」なる題名の書面を送付すると、不安を与える可能性があります。

実務的な通知方法

このような場合には、通知の形式を工夫する方法があります。
例えば、「資本金の額の減少のお知らせとご挨拶(兼 債権者異議申述催告書)」
といった表題にするなどして、宛名を「お取引先各位」とします。

文面としては、減資の実施についての案内と日頃の取引への謝意を中心に記載し、最後に「当社に債権を有する方は、一定期間内に異議を申し出てください」という形で付記します。
こうすることで、通常の挨拶状として受け取られやすくなろうかとおもいます。

実務で特に注意すべき点

このような通知を行う場合には、次の点に配慮することが重要です。
不安を与えない表現 → 倒産等を連想させない
返答不要の明示 → 不要な問い合わせを防ぐ
丁寧な説明 → 通常の挨拶文として構成

減資や組織再編等の債権者保護手続では、法律論だけでなく取引先との関係への配慮も重要になります。

本コラムのまとめ

減資や組織再編等の債権者保護手続において、賃貸保証金の返還債務のような将来債権をどこまで対象とするかについては、明確な基準があるわけではありません。
そのため実務では、対象に含めないという整理とするか、念のため通知を行うという安全策のいずれも考えられます。

通知を行う場合には、単なる法的手続としてではなく、取引先に不安を与えない形で行うことが重要です。
減資や組織再編等の債権者保護手続きの実務では、法律解釈と実務運用のバランスを取ることが求められます。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、債権者保護手続において賃貸保証金の返還債務は催告対象になるのかについて解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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