株主総会で株主が議決権を行使できない場面とは
株主総会における議決権行使が制限される場面
株主総会における議決権は、株主に与えられた最も基本的な権利です。
会社法上、株主は原則として、保有株式1株につき1個の議決権を有します。
もっとも、すべての株主が、すべての議案について常に議決権を行使できるわけではありません。
実務では、特定の場面に限って、議決権行使が明示的に制限されるケースがあります。
本稿では、「株主が議決権を行使できないのはどのような場合か」を、原則と例外の関係から整理します。

原則、株主は議決権を行使できる
まず大前提として、会社法は、株主が議案について特別の利害関係を有している場合であっても原則として、議決権行使を制限していません。
この点は、しばしば誤解されがちです。利害関係があるからといって、直ちに議決権行使が否定されるわけではありません。
もっとも、その結果として著しく不当な決議がされた場合には、決議取消しの対象となり得る、という事後的なコントロールが用意されています。
例外、法律が明示的に議決権行使を制限する場面
一方で、会社法は、特定の場面については、明確に議決権行使を禁止しています。
その多くは、「自己株式の取得」に関係する場面です。議決権行使が明確に禁止されている場面を3つ紹介します。
①株式譲渡不承認に伴う自己株式取得の場合
非公開会社では、株主から株式の譲渡承認請求がなされ、会社がこれを承認しない場合、会社自身が当該株式を買い取ることになります。
この自己株式取得については、株主総会で一定事項を決定しますが、譲渡承認を求めた株主本人は、その決議において議決権を行使できません。
これは、自らの株式の処分条件を自らの議決で左右するという構造を避けるための整理です。
②特定の株主を対象とする自己株式取得の場合
会社が、特定の株主からのみ自己株式を取得する場合にも、同様の考え方が取られます。
この場合、自己株式取得に関する株主総会決議について、取得対象となる株主は議決権を行使できません。
自己の売却条件を、自己の議決権で決定することを防ぐ趣旨です。
③相続人等に対する売渡請求の場合
定款に、相続等によって株式を取得した者に対し、会社が株式の売渡しを請求できる旨の定めがある場合、会社は株主総会決議を経て売渡請求を行います。
この決議においても、売渡請求の対象となる相続人等は議決権を行使できません。
ここでも、「自分が対象となる処分について、自分で決めることを避ける」という整理が貫かれています。
共通する考え方
これらの例外に共通するのは、次の点です。
・議案の内容が
・特定の株主の株式処分そのものに直結している
・その株主が議決に参加すると
・決定の公正さが著しく損なわれるおそれがある
このような場合に限って、法律が事前に議決権行使を遮断する構造が採られています。
実務上の注意点
実務で注意すべきなのは、「利害関係があるかどうか」と「議決権を行使できるかどうか」は、必ずしも一致しないという点です。
原則:利害関係があっても議決権は行使できる
例外:法律が明示的に禁止している場合のみ不可
この切り分けを誤ると、不要に議決権を排除してしまったり、逆に排除すべき株主を参加させてしまったりするおそれがあります。
本コラムのまとめ
株主の議決権は、会社法上、極めて強く尊重されている権利です。
そのため、議決権行使が制限される場面は、法律で明確に定められた例外に限られます。
自己株式取得に関係する場面では、対象となる株主が議決権を行使できないケースがあることを、あらかじめ整理しておくことが、株主総会運営・議事録作成の実務上、重要になります。
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本日は、株主総会で株主が議決権を行使できない場面について解説いたしました。
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