投資事業有限責任組合における主たる事務所移転の実務整理
投資事業有限責任組合(LPS)の変更登記
投資事業有限責任組合(いわゆるLPS)では、
組合契約で定めた主たる事務所の所在場所を変更する場面が定期的に生じます。
このとき実務で迷いやすいのが、
・どの範囲の移転であれば組合契約の変更が必要なのか
・契約変更が必要な場合、誰の同意・署名が求められるのか
という点です。
特に、
「組合契約に、無限責任組合員が裁量で事務所を変更できる旨の条項がある場合」
は、形式上は柔軟に見えるため、対応を簡略化してよいのか悩まれがちです。
本稿では、この点を登記実務との関係も踏まえて整理します。

主たる事務所の記載単位と契約変更の要否
まず前提として、
投資事業有限責任組合の主たる事務所については、
どの単位まで組合契約に記載されているかが重要です。
一般に、
・都道府県・市区町村までの記載
・番地まで特定した記載
のいずれかで定められていることが多く、この記載内容と実際の移転範囲との関係で、契約変更が必要かどうかを判断します。
もっとも、株式会社と異なり、LPSは「最小行政区画内での移転だから契約変更は不要」という整理は、必ずしも登記実務と相性がよいとは限りません。
裁量条項があっても「契約を作り直す」実務が選ばれる理由
・主たる事務所の所在地を具体的に定めつつ
・無限責任組合員の裁量で変更できる
・変更時は組合員へ通知する
という構成の組合契約は、実務上よく見られます。
形式的には、この条項を根拠に「契約変更をせず、通知だけで足りる」と考える余地もあります。
しかし、登記実務では、
・主たる事務所の変更が登記事項であること
・登記原因とその根拠関係を明確に説明できること
が重視されます。
そのため、主たる事務所の記載部分だけでも、契約書を作成し直す(変更契約を作成する)
という対応の方が、結果としてスムーズに進むケースが多いのが実情です。
「誰の同意が必要か」は別の問題
次に問題となるのが、主たる事務所の変更について、誰の同意・署名が必要かという点です。
裁量条項がある場合、
・無限責任組合員の判断で変更できる
・だから、同意書は無限責任組合員のみで足りるのではないか
という発想が出てきます。
しかし、ここで注意すべきなのは、
主たる事務所の所在地は組合契約の基本的事項に該当する
という点です。
登記実務上は「全組合員の同意」を前提に考える
登記実務の観点からは、主たる事務所の変更は、組合契約の変更事項として扱われます。
そのため、組合契約を変更する以上原則として、総組合員の同意が必要(無限責任組合員のみの同意では足りない)と整理するのが安全です。
裁量条項が存在していても、それは「内部的な運営ルール」としての意味合いにとどまり、登記の根拠としては弱いと評価される場面があります。
結果として、
・無限責任組合員のみの署名で同意書を作成する
・契約変更書を省略する
といった対応は、登記段階で補正を求められるリスクを高めます。
実務上の整理
投資事業有限責任組合の主たる事務所を変更する場合、実務上は次の整理が無難です。
主たる事務所の記載が変わるのであれば
→ 組合契約の変更書を作成する
契約変更である以上
→ 総組合員の同意(署名押印)を得る
たとえ裁量条項があったとしても、
登記実務との関係では、「形式を整えておくこと」が結果的に一番早いという評価になります。
本コラムのまとめ
投資事業有限責任組合の主たる事務所移転については、契約条項上は柔軟に見えても登記実務では明確な根拠資料が求められるというギャップがあります。
そのため、
「できるかどうか」ではなく
「登記まで一度で通すにはどうするか」
という視点で整理すると、
・組合契約の変更書を作成
・総組合員の同意を取得
という対応に落ち着くケースが多いといえます。
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本日は、投資事業有限責任組合における主たる事務所移転の実務整理について解説しました。
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