会社設立・本店移転前に必ず確認すべき商号調査の実務
同一商号・同一本店はなぜ禁止されるのか
会社の設立や本店移転、商号変更を検討する際、必ず問題になるのが
「その商号、その本店所在地で登記できるか」という点です。
「同じ名前の会社は全国にいくらでもあるのに、なぜダメなのか」
という疑問を持たれることもありますが、ここには明確なルールがあります。
本稿では、
・同一商号・同一本店が禁止される理由
・どこまでが「同一」と扱われるのか
・実務で行う商号調査の考え方
を整理します。
禁止されているのは「同じ名前」だけではない
登記実務で禁止されているのは、
商号が同一で、かつ、本店の所在場所が同一である場合です。
つまり、
・商号が同じでも、本店所在地が異なれば原則OK
・本店所在地が同じでも、商号が異なれば原則OK
という整理になります。
このルールは、「同じ場所に、同じ名前の会社が存在すると、取引先や第三者が区別できなくなる」という取引安全上の理由から設けられています。
「本店の所在場所」はどこまで一致するとアウトか
ここで実務上よく問題になるのが、住所表記の違いはどこまで許されるのかという点です。
結論から言うと、
・表記の揺れ
・番地の書き方の違い
では回避できません。
例えば、
「十丁目10番10号」と「10-10-10」
「10番10号」と「10番地10」
のように、実質的に同一の場所と評価される場合は、同一本店として扱われます。
一方で、
・番地自体が異なる
・建物が異なる
場合は、同じエリアであっても「同一本店」には該当しません。
ビル名・階数・部屋番号はどう扱われるか
商号調査の際に注意すべきなのが、ビル名や階数、部屋番号の扱いです。
登記上の本店所在地は、原則として「地番・住居表示」までで判断されます。
そのため、
・同じ建物
・同じ地番
であれば、「101号室」と「202号室」の違いがあっても、同一本店と扱われる可能性が高いのが実務です。
「部屋が違うから大丈夫」という判断は、かなり危険です。
法人の種類が違えば問題ないのか
次に多い誤解が、「株式会社と合同会社なら大丈夫ですよね?」という質問です。
結論としては、法人格が異なれば、同一本店・同一名称でも原則として登記可能です。
・株式会社ABC
・ABC合同会社
・ABC有限会社
といった違いは、別法人として区別されます。
また、
・ABC株式会社
・株式会社ABC
・ABC2株式会社
のように、商号が一致していなければ、同一本店でも禁止には該当しません。

「解散中」の会社がある場合の扱い
実務で見落とされがちなのが、解散しているが、清算が終わっていない会社の存在です。
清算結了登記がされていない限り、その会社は登記簿上「存在している会社」です。
そのため、
解散中(清算結了前)の会社がある場合
→ 同一商号・同一本店は不可
一方で、
清算結了登記が済んでいる会社
→ 既に消滅しているため、問題になりません。
商号調査は「検索エンジン」では足りない
会社名をGoogleで検索して「出てこないから大丈夫」という判断は、実務では通用しません。
理由は単純で、
・すべての会社がWebサイトを持っているわけではない
・Webサイト上の住所が登記簿と一致しているとは限らない
からです。
登記上の商号・本店所在地を確認するには、
登記情報を直接確認できる公的データベースを使う必要があります。
商号調査は、「現時点で同一商号・同一本店の会社が存在しないか」
を確認する行為であり、将来にわたって保証するものではないという点も押さえておく必要があります。
登記できるからといって何でも許されるわけではない
最後に重要な注意点です。
同一商号・同一本店に該当しなければ、
設立や本店移転の登記自体は可能です。
しかし、
・他社と誤認されるおそれのある商号
・既存会社の信用にただ乗りするような商号
を、不正の目的で使用することは別問題です。
登記が通るかどうかと、その商号を使い続けてよいかどうかは、必ずしも一致しません。
本コラムのまとめ
同一商号・同一本店の禁止は、「名前が似ているかどうか」ではなく、登記上、同一の会社が存在するかどうかという極めて実務的なルールです。
設立や本店移転の直前で慌てないためにも、
・商号
・本店所在地
は、セットで早めに確認することが重要です。
「この商号でいけるか?」という相談は、設立直前よりも、候補段階で行う方が、安全です。
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本日は、会社設立・本店移転前に必ず確認すべき商号調査の実務について解説しました。
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