役員

任期満了退任をきれいに証明する、選任懈怠まで含めた議事録の書き方・添付の切り分け

役員の「退任を証する書面」

取締役・監査役が任期満了で退任する場合の「退任を証する書面」を、
通常の改選期(定時総会開催)
選任懈怠(定時総会を跨いで未選任)
総会未開催(開催されるべき満了日での退任)
の3パターンで、議事録の書き方と添付の組み合わせに落として解説します。

原則定時総会議事録だけで退任を証明できる

先例(S53.9.18 民四5003号)の便宜的取扱いにより、
定時株主総会議事録に「本総会終結をもって任期満了退任する」旨を書けば、
議事録自体が退任を証する書面として機能します。

実務メモ
・専門家以外(法務部など)の作成分はここを必ず明記。抜けていたら作り直しを依頼。
・会社法下でもこの便法は踏襲されています。

選任懈怠があるときの書き方(議事録のみで通す)


総会は開催されている(前年総会あり)

書きぶり(例)

「取締役全員は、令和6年3月31日終了の事業年度に係る定時株主総会(開催日:令和6年6月●日)の終結をもって任期満了退任していたことを確認し、…」

添付
今回総会の議事録(上記の文言を記載)
任期満了時点の総会議事録(令和6年総会議事録:満了時点の存在確認)

任期満了すべき定時総会が開催されていない

書きぶり(例)

「取締役全員は、令和6年3月31日終了の事業年度に係る定時株主総会の開催されるべき満了日(令和6年6月30日)をもって任期満了退任していたことを確認し、…」

添付
・今回総会の議事録(上記の文言を記載)
・総会未開催である旨の記載(議事録本文で足りる。必要に応じ上申書で補強)

ポイント
・「いつ満了か」「その総会が開催されたか否か」を議事録内で完結させる。
・定款(任期・事業年度)の提示を求められる運用もあるため、念のため準備。


典型文例(そのままコピペ可)

A. 前年総会あり(選任懈怠)

議長は、当会社取締役全員が、令和6年3月31日をもって終了する事業年度に係る令和6年6月●日開催の定時株主総会の終結をもって任期満了退任していた旨を確認した。これを踏まえ、次のとおり取締役の選任を行った。——(以下、選任決議)



B. 前年総会なし(選任懈怠)

議長は、当会社取締役全員が、令和6年3月31日をもって終了する事業年度に係る定時株主総会の開催されるべき満了日(令和6年6月30日)をもって任期満了退任していた旨を確認した。これを踏まえ、次のとおり取締役の選任を行った。——(以下、選任決議)


添付の切り分け(早見表)

シーン 退任証明の主たる書面 追加で求められ得る書面
通常の改選(遅延なし) 当該定時総会議事録(「本総会終結をもって…」の文言)
選任懈怠(前年総会あり) 今回総会議事録(確認条項入り) 前年総会議事録(満了時点の存在確認)/定款(任期・事業年度)
選任懈怠(前年総会なし) 今回総会議事録(未開催の明記) 上申書(未開催の補強)/定款

管轄により定款の提示や上申書を形式的に要求することあり。事前相談で余計な往復を防ぎましょう。

余談、昔話に学ぶ証明材料の逆算

確定任期(2年)を採っていた会社では、個々人がバラバラに満了し、登記官から前任者や就任起算の確認を求められることがあった。
その際は、選任時総会議事録や、閉鎖登記事項証明書(役員欄)まで遡って提示——材料の逆算は今も有効な思考法です。

本コラムのまとめ

・基本は、議事録1本で「退任を証する書面」に仕立てる。
・選任懈怠でも、確認条項を入れれば議事録のみで足せる(必要に応じ、前年総会議事録や上申書で補強)。
・迷ったら、「いつ満了か」「開催の有無」を議事録に書き切る。これが最も確実です。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、任期満了退任をきれいに証明する、選任懈怠まで含めた議事録の書き方・添付の切り分けについて解説しました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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