新設分割と分割会社の変更登記を同日に動かすときの実務設計
新設分割と分割会社の変更登記
新設型会社分割(承継会社=新設会社)では、分割会社の登記と新設会社の設立登記を、新設会社の管轄登記所にまとめて申請します(経由同時申請)。
ただし、分割会社側で同日に別の変更(商号・本店・代表者・役員交代 等)を動かす場合、その変更は分割会社の管轄登記所(別庁)へ別申請が必要です。
この二正面作戦は、申請順序と添付の整合を誤ると却下につながるのが落とし穴。今日は、同日実行を安全に通す段取りを、チェックリスト付きで整理します。
まず押さえる構造(誰に何を出す?)
A登記所(新設会社の管轄)
① 新設会社の設立登記(新設分割)
② 分割会社の「分割による変更登記」(会社分割に関する分のみ)
添付に分割会社の登記事項証明書・印鑑証明書(現在の登記内容の確認/届出印照合)
B登記所(分割会社の管轄)
③ 分割会社の“その他”の変更登記(商号、本店、代表者、役員交代、目的 等)
重要:③はAに乗せられない(Aには調査権限がない)。
したがって別申請になり、登録免許税も別建て
却下を招く典型的なズレ
商号変更を同日に行う
・6/1効力で商号変更する場合、Aの申請書の分割会社表示は“新商号”で書くのが原則。
・するとAに添付する分割会社の登記事項証明書も“新商号”である必要があるが、商号変更は6/1以後しか申請できない。
・よって6/1当日にAを申請しつつ、新商号の証明書を添付することは原則不可能。
逆手順の危険:旧商号の証明書でAを申請し、Bで先に商号変更登記を通すと、AからBへ送られる後日処理時に“旧商号”と“新商号”が不一致となり、却下のリスク。
代表者交代/本店移転も同様
・Aの申請書記載(代表者氏名/本店所在地)と、Bで先に登記した内容がズレると補正原因に。
・役員交代も注意:Aに添付する株主総会議事録の出席取締役と、添付証明書記載の現役員が一致していないとNG。
安全に通す段取り(原則・例外)
原則:Aを最優先/Bは後追い
・会社分割の効力発生の要は新設会社の設立登記(A)。
・Aの申請書は便宜的に“旧表示”で記載し、登記官と事前調整(電話相談・窓口協議)で後日整合を約束するのが現実解。
・Bの変更登記はA申請後に投入し、登記記録の整合を合わせる。
事前相談の要点
・Aの申請書備考に「6/1付で分割会社の商号変更等を別庁で申請予定。Aは旧表示で提出」と明記。
・処理順序の確認(B側で先行処理しないよう意思疎通)。
例外:Bを先に通さざるを得ないとき
・役員交代など議事録の整合をどうしても合わせたい案件では、Bを先行→その登記事項証明書をAに添付。
・ただし時間的にAの当日申請が危ういため、Aの受理日=効力日の要件とにらみ合い。
・ここはタイミングが生命線。事前協議必須。
チェックリスト(当日朝に読む用)
A(新設会社管轄)
□ 新設会社 設立登記(分割)
□ 分割会社 分割による変更登記
□ 分割会社 登記事項証明書(旧表示で提出する場合は備考で注記)
□ 印鑑証明書(届出印照合)
B(分割会社管轄)
□ 商号/本店/代表者/役員の変更登記申請書
□ 効力日=Aと同日の再確認
□ 登記事項証明書をAへ即時フィードバックできる体制
共通
□ 株主総会議事録と登記記録の人名・住所・日付の一致
□ 申請書の会社表示(商号・本店・代表者)が一貫しているか
□ 備考欄の注記(旧表示提出の理由、後続手当)
本コラムのまとめ
・A(新設会社管轄)優先で効力発生を死守。
・B(分割会社管轄)の変更は後追い整合が基本。
・どうしても書証の整合を取る必要があるときは、B先行→A添付。
・いずれも登記官との事前協議が命綱。備考注記と処理順の合意で却下を必ず回避しましょう。
ひとことで言えば
「効力を生むAを死守、Bは約束で追随」。
これが、新設分割×分割会社変更を同日に通す最短ルートになります。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、新設分割と分割会社の変更登記を同日に動かすときの実務設計を解説しました。
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