特例有限会社の解散登記で注意すべきポイント、株式会社との違いと清算人登記事項の落とし穴
特例有限会社の解散・清算登記に特有の注意点
特例有限会社の解散・清算登記に特有の注意点について、以下の3点を中心に解説いたします。
1.特例有限会社と株式会社の登記事項の違い
2.代表取締役・監査役など役員登記の相違点
3.清算人登記で誤りやすいポイント(住所・代表清算人の扱い)
特例有限会社と株式会社の登記実務上の違い
(1)取締役会・監査役設置会社の登記事項
・特例有限会社では、「取締役会設置会社の旨」「監査役設置会社の旨」は登記事項ではありません。
・そもそも特例有限会社では取締役会を設置できないため、「取締役会設置会社の旨」は存在しません。
・「監査役設置会社」である旨は定款の記載事項ではありますが、登記事項ではない点に注意が必要です。
※「監査役の登記があれば、設置会社だと分かるから」という理由で、登記事項から除外されていると考えられます。
(2)株式譲渡制限に関する規定
・株式会社と異なり、特例有限会社では定款の株式譲渡制限を変更できません。
これは会社法施行時の整備法による「みなし規定」により職権登記されており、定款変更・登記変更とも不可です。
・実質的に同じ内容であっても、「変更登記」はできない点に注意が必要です。
特例有限会社の役員登記事項と株式会社の違い
(1)登記事項の比較
| 株式会社 | 特例有限会社 | |
|---|---|---|
| 取締役 | 氏名 | 住所・氏名 |
| 監査役 | 氏名 | 住所・氏名 |
| 代表取締役 | 住所・氏名 | 氏名のみ |
(2)代表取締役の登記の有無
・株式会社:代表権を持つ取締役はすべて「代表取締役」として登記されます。
(例)取締役A・Bが各自代表 → 「代表取締役A」「代表取締役B」
・特例有限会社:全員が代表権を持つ場合、「代表取締役」の登記はしません(登記できません)。
| 代表権の形態 | 株式会社の登記例 | 特例有限会社の登記例 |
|---|---|---|
| A・B 各自代表 | 取締役A・B代表取締役A・B | 取締役(住所)A・B |
| Aのみ代表 | 取締役A・B代表取締役A | 取締役(住所)A・B代表取締役A |
この構造の違いにより、代表取締役の抹消登記などでミスが生じやすくなります。
特例有限会社では、平取締役がいない場合、「代表取締役」の登記は存在しない点を常に確認する必要があります。
清算人の登記事項で混同しやすい点
(1)清算人の登記は株式会社と同じではない
株式会社の清算人登記は、取締役会非設置会社の方式に近く、
通常は「清算人A、代表清算人A」と登記します。
一方、特例有限会社の清算人登記はこれと異なり、
「清算人の氏名・住所」を登記し、代表清算人の登記は不要です。
(2)法的根拠(会社法整備法第43条)
(登記に関する特則)
1 特例有限会社の登記については、会社法第911条第3項第13号中「氏名」とあるのは「氏名及び住所」と、同項第14号中「氏名及び住所」とあるのは「氏名(特例有限会社を代表しない取締役がある場合に限る。)」とする。
2 特例有限会社の清算人の登記については、会社法第928条第1項第1号中「氏名」とあるのは「氏名及び住所」と、同項第2号中「氏名及び住所」とあるのは「氏名(特例有限会社を代表しない清算人がある場合に限る。)」とする。
→ したがって、清算人が1名の場合は「氏名・住所」の登記のみで完結します。
「代表清算人」の登記は不要です。
(3)実務での注意点
・株式会社の感覚で「代表清算人」と記載すると誤りになります。
・委任状・印鑑届書なども「清算人」に統一して差し替えが必要。
・特例有限会社の清算人登記は株式会社とは異なる登記事項構造であることを念頭に置くことが大切です。
特例有限会社解散時のチェックリスト
| チェック項目 | 株式会社 | 特例有限会社 |
|---|---|---|
| 取締役会設置の登記 | あり | 不可 |
| 監査役設置会社の登記 | あり | なし |
| 株式譲渡制限規定の変更 | 可 | 不可(整備法上固定) |
| 取締役・監査役の登記事項 | 氏名のみ | 住所・氏名 |
| 代表取締役の登記 | 必ず登記 | 代表者が複数の場合は登記しない |
| 清算人の登記事項 | 清算人+代表清算人 | 清算人(住所・氏名)のみ |
本コラムの結論
・特例有限会社は、形式上「株式会社」として存続しているものの、登記事項・記載構造は旧有限会社法の名残を保持しています。
・特に、清算人の登記で株式会社の方式を誤って適用しないよう要注意。
・登記書類(委任状・印鑑届書など)も「代表清算人」ではなく「清算人」で統一して作成します。
登記直前で気づけば修正可能ですが、事前確認を怠ると補正リスクが高まります。
特例有限会社の登記は年々減少していますが、旧制度の構造を踏まえた実務判断がいまなお求められる分野です。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、特例有限会社の解散登記で注意すべきポイント、株式会社との違いと清算人登記事項の落とし穴について解説しました。
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