種類株式

組織再編にかかる種類株主総会の要否

組織再編で種類株主総会が必要となる場合

本稿では、組織再編(株式交換など)を行う際に、種類株主総会が必要となるのはどのような場合かを考えます。
特に、株主割当による募集株式の発行と第三者割当による募集株式の発行とで、なぜ会社法上の取扱いが異なるのか?という点に焦点を当てます。

322条の枠組み「損害を与えるおそれ」という入口

条文の枠 → 322条1項に列挙の行為(株式交換は11号・12号)が対象で、「ある種類の株主に損害を与えるおそれ」があるとき、その種類の種類株主総会が必要。
実務感覚 → 組織再編ではこの「おそれ」判断が割り切れない局面があるため、念のため開催という取扱いが見られることもある。
定款による排除322条2項の「決議不要の定款規定」があれば、その範囲で322条1項の要否検討を省略できる前提で議論が進む。

株主割当と第三者割当、同じ優先株増でも結論が揺れる理由づけ


「株主割当」の前提(202条1項の読み筋に沿う連載の整理)

種類株式発行会社の株主割当は、既存保有と同一“種類”の株式を割り当てる設計。
・したがって、普通株主に優先株を割り当てる構成は株主割当ではない

具体例の比較

典型場面 連載の結論整理(※連載内の到達点をそのまま踏襲)
株主割当(優先→優先を等比。結果として優先株数が増加) 普通株主に損害を与えるおそれがある場合、普通株式の種類株主総会(322条1項)が必要となり得る。一方で優先側は不要との整理。
第三者割当(優先をC40・D60など特定者に配分) 322条の種類株主総会は要せず。ただし譲渡制限株式を発行するなら199条4項により「発行される種類」の種類株主総会が必要譲渡制限がなければ199条4項も不要


「決議不要の定款規定」と登記実務の噛み合わせ

置ける条文322条2項・199条4項・238条4項。
登記事項か否か(連載の叙述)
 ・322条2項は登記事項。
 ・199条4項・238条4項は登記事項ではない。

組織再編特則783条3項と795条4項の射程

783条3項(消滅会社・完全子会社が種類発行会社、対価が譲渡制限株式等)
→ 当該割当を受ける種類の種類株主総会が必要(議決権行使株主がいない場合を除く)。

795条4項(存続会社等が種類発行会社で、再編対価として自己の株式を交付)
→ 当該種類の種類株主総会が必要(譲渡制限株式で199条4項の定款の定めがないものに限る)。

本コラムのまとめ

・322条の「損害を与えるおそれ」判断は割り切れない局面がある。
・株主割当/第三者割当で、要求される種類株主総会が入れ替わる設計上の差異は直感に反すると感じられる場面がある。
・定款規定の配置と登記実務(添付書類の要否や登記事項該当性)の噛み合わせに留意が要る。

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本日は、組織再編にかかる種類株主総会の要否について解説しました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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