組織再編

新設分割の「資本金の額の計上に関する証明書」は要る?ゼロ資本「0円以下」表記まで実務整理

本コラムの結論

・新設分割の設立登記では「資本金の額の計上に関する証明書(以下、計上証明)」の添付は必要です。
・計上証明は法務省記載例(8-1 等)に従い「株主資本等変動額」を記載するのが原則です。
・「0円以下」のようなあいまい表記は不可。0円に確定できるなら「金0円」と明記すれば差し支えありません。

吸収型で資本金が増加しない場合は、従来どおり計上証明不要の運用で問題ありません。

資本金計上書はなぜ必要か(趣旨)

資本金計上証明は、今回登記する資本金が会社法の枠内で適法に計上されていることの自己証明です。
新設分割では、承継資産・負債の組み合わせ次第で株主資本等変動額(以下、変動額)がプラスにもマイナスにもなり得るため、基礎となる変動額を明示して「資本金の額 ≤ 変動額」であることを示すのが基本設計です。

ゼロ資本(資本金 = 0円)でも要るのか?

・理屈のうえでは、資本金を0円にすれば変動額の大小に関わらず適法性の問題は生じにくいため、「不要では?」という発想になりがちです。
・しかし実務回答は「添付が必要」。ゼロ資本であっても、記載例どおり変動額の欄を埋める扱いが原則です。
・したがって、変動額を「0円以下」や「未確定」等とするのは不可。確定して0円といえるなら「金0円」、それが難しいなら概算でも“金○円”と具体額で記載するのが安全です(※概算容認は実務上の便宜)。

よくある表記の可否

記載例 可否 ポイント
変動額 金0円 0円と確定できる場合に限る
変動額 金○○円(概算) 概ね可 実務便宜として最小限妥当額で。根拠計算を内作しておく
変動額 金0円以下 不可 あいまい表現は受理リスク高い
変動額欄を空欄 原則不可 記載例に従い数値を置くのが安全

商業登記法上は「会社法445条5項に従って計上したことを証する書面」の添付が要件で、条文自体は“変動額の記載”まで明示していません。
もっとも法務省の様式例が実務標準になっているため、記載を省く運用は推奨できません。

吸収型との違い(不要となる場面)

吸収合併・吸収分割等の吸収型で、資本金が増加しない場合は、従前どおり計上証明の添付は不要です。
・一方、新設分割は原則必要(資本金0円でも)。

実務の進め方

1.スキーム確定前に、承継資産・負債の見込みから変動額のレンジを試算
2.資本金を0円にするか/金額を持たせるかを、税務・会計・表示の観点で決定
3.計上証明(8-1等)に数値を記載(確定困難なら最小確実額で)
4.申請書一式の一貫性確認(会社名・日付・金額)
5.不安があれば事前照会(特にイレギュラー表現時)

ひな形(抜粋・記載欄のみ)

株主資本等変動額 金〇〇〇円
上記の範囲内で、当会社の資本金の額を金□□□円として計上したことを証明する。

※ 0円の場合
株主資本等変動額 金0円
当会社の資本金の額を金0円として計上したことを証明する。

ありがちな補正ポイント

・「0円以下」「未確定」のあいまい記載
・ひな形の条項抜け(会社表示・日付・記名押印)
スキーム変更後の数値更新漏れ(効力日変更時は再試算)

本コラムのまとめ

・新設分割の設立登記=計上証明は原則必要。
・変動額は数値で。「0円以下」は不可、0円なら“金0円”と明記。

・正確な確定額が難しい場合、実務上は概算額(株主資本等変動額であれば、最低額)を記載している
 (※実際効力発生時点の金額を当日中にぴったり計算するのは難しい)
・管轄運用の差を回避するため、迷う表記は事前照会が最短・最安全です。

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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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