合同会社

合同会社設立時の「代表社員の就任承諾書」は本当に要るのか?定款の定め方・電子定款/紙定款・就任承諾の要否を整理

論点の全体像

合同会社(LLC)の設立では、代表社員の就任承諾書が要るのか・要らないのかで混乱が起きがちです。背景には次の三層の論点が重なっています。

1.代表社員の定め方(定款で直接定める/互選で定める)
2.就任承諾行為の要否(そもそも必要か)
3.定款の形式(紙定款/電子定款)と、登記の添付書類の要否

本稿はこれらを一つずつ分解して、実務で迷わない判断基準を示します。

合同会社の基本設計

・社員は定款の必要的記載。何も定めなければ全員が業務執行社員、さらに全員が代表社員になります。
・一部の社員のみを業務執行社員・代表社員にするなら、
 ①定款で直接その者を定める、または
 ②定款の定め(互選など)に基づき決める
という二通りの設計があります。

就任承諾「行為」が要る場合・要らない場合

合同会社の代表社員の就任承諾は、株式会社(取締役会非設置会社)における代表取締役の考え方とパラレルに整理できます。

・定款で代表社員を“直接”定めた場合(直接選定方式)
 → 代表社員の就任承諾行為は不要と解されます。
 (各自代表が原則で、代表権の付与に新たな承諾を要しないという整理)

・定款の定めに基づく“互選”で代表社員を定める場合(間接選定方式)
 → 就任承諾行為が必要(互選に対する承諾が必要という整理)

ここでのポイントは「行為の要否」です。
行為が不要なら、原則として承諾書の添付も不要という帰結になります。

紙定款と電子定款で添付が変わるのか

しばしば混乱の原因になるのが定款の形式差です。

紙定款
社員が定款に自ら記名押印しており、誰が代表社員かが定款そのものから判別できます。
定款で代表社員を直接定めたケースでは、代表社員の就任承諾書の添付は不要として処理できます。

電子定款
定款は代理人が作成するのが通常で、定款自体に社員本人の押印がありません。
とはいえ、「直接選定方式」なら就任承諾“行為”が不要という本質は変わりません。
電子定款でも、定款で代表社員を直接定めていれば、登記に就任承諾書を添付しなくても受理されるのが実務上の結論です。
(※懸念があれば事前確認が無難)

代表社員就任承諾書が「必要」になる典型

定款の定めに基づく互選で代表社員を定めた(=間接選定)
 → 就任承諾書を添付。

・設計上、社員の加入(出資)や業務執行社員の指定を、定款だけでは直接判別できない形にしている場合
 → 代表社員の選任と併せて、互選決議書・承諾書で意思確認を整えるのが安全。

実務フローチャート

1.定款に代表社員を“直接”記載しているか?
 → Yes:就任承諾“行為”不要。承諾書の添付は原則不要(紙/電子いずれも)。
 → No:互選等の間接選定。就任承諾書の添付が必要。

2.電子定款で不安がある/所管の運用が読みにくい?
 → 事前に管轄へ照会、又は承諾書を任意添付(安全策)を検討。

添付書類の整理(設立時・代表社員関連)

定め方 代表社員就任承諾書 併せて整えると良いもの
定款で直接定める 不要(原則) 出資の払込証跡、社員・業務執行社員の記載整合
定款の定めに基づく互選 必要 互選決議書、代表権表示の整合、出資関係書類


よくある誤解とリスク管理

・「電子定款だから承諾書必須」は誤解。問題の本質は選定方式。
・とはいえ、運用差に起因する補正コールはゼロではありません。案件の急ぎ・相手局の傾向を踏まえ、任意添付でリスクヘッジも選択肢。
・定款の設計段階で、代表社員を直接定める条項を置くと、書類構成が最もシンプルになります。

本コラムのまとめ

・カギは「直接選定」か「互選」か。
・直接選定なら行為不要→承諾書不要(紙・電子を問わず)。
・互選なら承諾書が必要。
・運用差には事前照会で対応。定款設計を一段目で正しく固めれば、登記はスムーズに通ります。


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合同会社設立時の「代表社員の就任承諾書」は本当に要るのか?定款の定め方・電子定款/紙定款・就任承諾の要否を整理について解説いたしました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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