会社の本店(住所)移転

本店移転の決議と定款記載の関係 、定款に具体的所在場所を定めた場合の取扱い

問題の所在

会社の本店移転登記に際しては、定款の記載内容と業務執行機関の決定の両方をどう位置づけるかが問題となります。
特に、定款に「東京都港区新橋○丁目○番」のように具体的所在場所を定めている場合、
・定款変更決議だけで足りるのか
・それとも本店移転の決議も別に必要なのか

が実務上の論点となります。

設立時の定款記載と附則の効力

設立段階では、
・定款本則に「本店は東京都港区に置く」と定め、
・附則に「会社成立時の本店所在地は東京都港区新橋○丁目○番とする」と定める方法が可能です。

附則の効力は設立時に限られるため、設立後は「港区に置く」という抽象的な規定に戻り、以降の移転は通常の取扱いに従います。

本店移転の決議構造

本店移転には、次の二段階の決定が関わります。
1.定款変更決議(株主総会特別決議)
  定款に具体的所在場所が記載されている場合、その変更が必須。
2.本店移転決議(取締役会や業務執行社員の決定)
  実際の移転を執行するための決議。

つまり、定款変更と移転決議は別個に必要とされています。

登記原因日の決め方

本店移転日(登記原因日)は「定款変更決議日」ではなく、業務執行機関の決定日または実際の移転日に基づきます。
ただし、実際の移転日が取締役会決議日より遅れる場合には、取締役会決議をやり直す必要が生じることもあります。

定款に具体的所在場所を置く意味

・一見すると形式的に思えますが、実務的には業務執行機関の裁量を制限する効果があります。
・株主が定款変更を認めない限り、隣の住所にすら移転できないため、株主統制の強化という意義を持ちます。
・もっとも、実際には「設立登記を簡便にするため」に具体的所在地まで定めるケースが多いのが実情です。

実務上の注意点

定款に具体的所在地を置くと、移転のたびに定款変更決議が必要となり、手続き負担が増える。
・本店移転日は「定款変更日」と誤解しやすいため、議事録や決議日を明確に整理すること。
・決議が二重に必要となることを踏まえ、設立時には「最小行政区画まで」の定款記載に留めるのが一般的。

本コラムのまとめ

本店移転の登記では、
定款変更決議(具体的所在場所を変更する場合)と
本店移転決議(業務執行機関による移転決定)
がいずれも必要です。
定款に具体的所在場所を置くことは株主統制の意味を持ちますが、実務上は負担が増すため、現在は最小行政区画までの記載が一般的となります。

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本日は、本店移転の決議と定款記載の関係 、定款に具体的所在場所を定めた場合の取扱いについて解説いたしました。
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本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

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