株式買取請求に関する株主への通知の実務整理(合併編)
どのケースでも通知は必要か
合併では、原則として存続会社・消滅会社それぞれの株主に株式買取請求権が認められます。
そのため会社は、効力発生日の20日前までに、株主へ
・合併を行うこと
・当事者の商号・本店
を通知します。
もっとも、100%親子・100%子会社同士(兄弟)の合併のように買取請求権の行使が実務上想定されにくい場面では、「不要」とする見解もあります。
ただし、法律に明文の省略規定はなく、形式面を重視して通知(または公告)を行うことを勧める立場が一般的です。
通知の代わりに公告で足りる場合
通知に代えて公告で足りるケースがあります。実務では、合併公告と兼ねることが多く、官報のパンフレット記載例に沿い、
「……いたしましたので公告します。」
という文言を入れると、通知に代わる公告(通知公告)を兼ねる取扱いです。
基本的に、多くの会社は、この文言を採用しますので、意図せずあえて「公告します」という文言を省いてしまった場合は、通知公告を別途することを検討しなくてはなりませんが、多くは合併公告をすることで手続き上、足りると考えてよいでしょう。
当該文言は、内容的には通知事項を満たしますが、「公告します」有無で兼用の可否が左右される点は分かりにくいという印象は残ります。
上場会社などでは買取請求の方法まで懇切に公告する運用も見られます。
実務対応(書面通知か公告か)
弁護士が関与する案件では、実質的に不要と判断し、個別の書面通知を省く処理が示されることもあります。
もっとも、第三者に対する“通知した証拠”を残す観点から、公告で体裁を整える方法が推奨されます。
過去には合併契約書に「株主への通知を兼ねる」旨を記載し、個別通知書を作成しない処理が行われた例もあります。
本コラムのまとめ
・合併に伴う株主への通知は原則必要(効力発生日の20日前まで)。
・通知に代わる公告を用いれば、合併公告と兼用できる(「公告します」等の文言を用いる実務)。
・100%グループ内合併でも明文の省略規定はなく、通知または公告で形式を整えるのが安全。
・株主の権利行使の観点から、近時は丁寧な記載を行う公告も見られる。
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株式買取請求に関する株主への通知の実務整理(合併編)を解説いたしました。
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