法人登記の最新改正と実務への影響、令和7年施行を踏まえたチェックポイント
各種法人の改正の要点
令和7年4月から、学校法人や公益法人をはじめとする各種法人に関して、登記や役員任期に関する重要な法改正が施行されました。これらの改正は司法書士を含む専門家の実務に直結し、依頼者への説明や登記申請の準備に影響を及ぼします。本コラムでは、改正の要点と実務上の留意点を整理します。
司法書士実務に直結する犯収法改正
令和6年4月に犯罪収益移転防止法が改正され、司法書士が登記申請を受任する際の確認義務が強化されました。
これまでは法人の名称や所在地、代表者の確認で足りましたが、改正後は次の事項の確認が必須となっています。
・取引の目的
・法人の事業内容
・実質的支配者の本人確認
今後は、登記の受任にあたっても銀行口座開設並みの厳格さが求められます。
学校法人・理事長改選登記の義務化
従来は「校長=理事長」の場合、校長職にある限り理事長も継続と解されており、変更登記を要しませんでした。
しかし、私立学校法改正(令和7年4月施行) により、校長理事についても任期(最長4年)が適用され、定期的に理事長の変更登記が必要 となりました。
また、校長としての選任と理事としての選任は別個に行う必要があり、実務上は「校長職=理事」という従来の取扱いからの転換が求められています。
公益法人・外部理事・外部監事の設置義務化
公益認定法の改正により、公益社団法人・公益財団法人では 外部理事および外部監事を必ず置くことが義務化 されました。
・外部理事→法人の業務執行に関与していない者
・外部監事→過去10年間、法人の理事や使用人でなかった者
登記事項にはなりませんが、議案書や議事録に「外部理事」「外部監事」である旨を明記することが望ましいとされています。
医療法人・理事長選任と「予選」の可否
医療法人では、理事長は理事会で選定されます。
・理事の構成が変わらず全員重任の場合 → 「予選」で理事長を選定可能
・新任理事が含まれる場合 → 改選後に改めて理事長選任が必要
また、理事会議事録の署名押印については、原則として出席理事・監事全員が必要ですが、定款に定めがある場合は「理事長+監事のみ」で足りる取扱いが認められています。
社会福祉法人・評議員会の必置化
平成29年の大改正により、社会福祉法人は評議員会・理事会・監事を必置とされました。
・理事の任期は2年以内
・評議員は4年以内(定款で6年まで可)
・理事長のみが代表権を持つのが原則に整理
登記申請や議事録作成では、一般社団法人等に準じた形式が求められるようになっています。
宗教法人・代表役員のみ登記事項
宗教法人では代表役員のみが登記事項で、任期に関する法律上の規定もありません。
ただし、不動産処分や本店移転の際には公告・所轄庁の認証が必要 であり、承認取得に1年近く要する場合もある点に注意が必要です。
本コラムのまとめ
今回の改正を踏まえると、司法書士実務においては次のポイントが重要となります。
・犯収法改正に伴う依頼者確認の厳格化
・学校法人や医療法人の役員任期と登記実務の見直し
・公益法人における外部役員の設置義務
・定款変更や添付書面の電子化に関する新ルール
法人の種類ごとに根拠法や登記事項が異なるため、「会社法の感覚」をそのまま適用しないこと が肝要です。司法書士としては、依頼者に最新の法改正を踏まえた的確なアドバイスを行うことが求められます。
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本日は、法人登記の最新改正と実務への影響、令和7年施行を踏まえたチェックポイントを解説いたしました。
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