株式交換 / 株式分割・株式併合 / 種類株式
キャッシュ・アウトの手法と選択基準
キャッシュ・アウト
100%子会社化や事業承継の局面では、少数株主の存在が大きな課題となります。
いわゆる「キャッシュ・アウト」とは、少数株主を現金対価で排除し、株式を集中させるための手法を指します。
近年は上場企業だけでなく、中小企業の株式承継でも活用される場面が増えています。
キャッシュ・アウトの主な手法
手法 | 特徴 | 実務上の留意点 |
---|---|---|
相対取引・自己株式取得 | 株主が任意に売却する場合。 | 株主が応じない限り成立せず、キャッシュ・アウトの枠組みには入りにくい。 |
取得条項付株式 | 一部株式のみを取得できる。 | 定款変更時に株主全員の同意が必要。事実上困難。 |
株式交換 | 完全親会社化に利用可能。対価を現金に設定する方法、交換比率を調整して端数株にする方法あり。 | 契約締結・開示義務・債権者保護手続が必要。現金対価の場合は非適格交換の税務リスクあり。 |
株式併合 | 持株数を整理し、端数株を排除可能。 | 従来は少数株主の異議権がなく訴訟リスクが指摘されたが、改正により買取請求権付与が検討された。 |
全部取得条項付種類株式 | 株式を一括取得可能。100%減資と同時の再発行スキームも利用可。 | 登録免許税を抑制できるが、開示制度の充実が求められる。 |
現金対価の合併 | 消滅会社株主に現金交付。 | 実務頻度は高くないが、選択肢の一つ。 |
手続の難易度と所要日数
・株式併合や全部取得条項付種類株式は比較的簡便。
・株式交換は関与会社が複数となり、開示・契約・債権者保護手続を要するため時間を要する。
・株式交換の対価を現金にすると、債権者保護手続のためさらに期間が長期化する。
税務面の考慮
・株式交換では「非適格交換」となると課税リスクがある。
・取得比率を不自然に設定することも問題となるため、税理士・会計士と連携した検討が不可欠。
本コラムのまとめ
キャッシュ・アウトは、複数の制度を組み合わせて実現可能ですが、手続の難度・税務・訴訟リスクを踏まえ、ケースごとに最適な手法を選択する必要があります。
株主構成や目的によって最適解が異なるため、複数案を提示し、取締役会・株主総会において慎重に検討することが重要です。
手続きのご依頼・ご相談
キャッシュ・アウトの手法と選択基準について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。