株主提案による解散決議と取締役の自動退任
株主提案による解散決議
通常、会社と役員との関係が悪化した場合にまず検討されるのは「取締役の解任決議」です。
しかし、株主総会での解任は形式的にも心理的にも負担が大きく、社内に軋轢を残すケースも少なくありません。
そのため、実務上は辞任を促すか、任期満了を待つといった方法が取られることが多いのが実情です。
ところが、会社の支配権を有する株主が一人である場合には、よりシンプルな方法として「解散決議」を選択することが可能です。
ケースの概要
・会社の機関構成は「株主総会+取締役1名」。
・株主と取締役との関係が良好でなく、取締役を介さずに手続きを進めたいという要望。
・株主は100%の議決権を保有。
採られた手法
・株主提案による書面決議で会社の解散を決議。
・清算人に株主本人を選任。
・解散により取締役は自動的に退任するため、解任や辞任といった煩雑な手続きを経る必要がない。
・登記申請も清算人が行い、取締役の協力を要しない。
実務上のポイント
取締役の自動退任
解散登記を経ることで、取締役は当然に退任扱いとなる。
監査役の場合の「定款変更による退任」とは異なり、取締役に固有の例外的なケース。
印鑑の問題
届出印を取締役が保持している場合でも、清算人として別の印鑑を届け出れば実務上支障はない。
通知のあり方
法的には取締役の協力は不要であるが、完全に黙って進めることは望ましくないので、
事後的に解散を通知するなど、最低限の礼儀は欠かさない方が無用のトラブル防止につながります。
本コラムのまとめ
取締役との関係がこじれている会社においても、株主が全株式を保有しているならば、株主提案による解散決議は実務上有効な選択肢となり得ます。
取締役を強制的に解任するよりも軋轢が少なく、シンプルに会社を整理できる点で活用価値のある方法といえるでしょう。
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本日は、株主提案による解散決議と取締役の自動退任について解説いたしました。
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