定款変更・その他の登記

取締役会における書面決議の実務整理

書面決議の利用場面

取締役会の書面決議(決議の省略)は、役員のスケジュール調整が難しい大企業や、緊急性がある案件で利用されます。
ただし、3か月に1回以上の業務執行報告に関する取締役会は書面決議できないので注意が必要です(会372条2項、363条2項)。
書面決議を可能にするには、定款に規定を置くことが必須です。緊急時対応のために備えて規定を置く会社が大半です。

書面決議の成立要件

・取締役全員の同意
・監査役の異議がないこと

監査役の異議については書面作成義務はありませんが、後で異議を唱えられると決議が無効となるおそれがあるため、実務では「異議がないことの証明書」を取り付けるのが通例です。

書面決議の書類

紙で行う場合は、通常以下の書類を作成します。

・提案書
・同意書
・議事録
・(監査役がいる場合)異議がないことの証明書
・監査役用の提案内容書(必要に応じて)

電子メール等で行う場合も可能ですが、成りすまし防止や保存方法に工夫が必要です。

実務上の留意点(Q&A形式)

同意書と議事録は別に保存可能か?
→ 議事録だけで内容が完結するなら別保存で可。同意書や提案書を引用する形式なら写しを添付。原本は議事録と別に保存する。

議事録に記名押印するのは誰か?
→ 書面決議では出席取締役がいないため、全員の押印義務はなし。最低限、会社の実印を押すのが望ましい。

提案者自身の同意書も必要か?
→ 必要。全員分を揃えることが条件。

特別利害関係取締役には提案を送る必要があるか?
→ 議決権を行使できない取締役には提案不要。同意書が欠けても、議事録にその者を特別利害関係人として記載しておけば問題ない。

同意書の内容はどこまで記載すべきか?
→ 最低限、どの提案に同意するかを明確にする。提案書の日付や内容を特定して引用する形式が簡明。

本コラムのまとめ

取締役会の書面決議は、
・定款規定が前提
・取締役全員の同意+監査役の異議なしで成立
・書面作成・保存の方法に柔軟性があるが、同意書・議事録の整合性が大切
・提案者を含む全員分の同意書が必要
という点を押さえて運用する必要があります。

手続きのご依頼・ご相談

本日は、取締役会における書面決議の実務整理について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。

本記事の著者・編集者

司法書士法人永田町事務所

商業登記全般・組織再編・ファンド組成・債務整理などの業務を幅広く取り扱う、加陽 麻里布(かよう・まりの)が代表の司法書士事務所。
【保有資格】
司法書士登録証

会社法人登記(商業登記)の

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