中間配当の基準日は必要か?会社法と実務の整理
中間配当の基本制度
会社法では、定款に定めがある場合に限り、取締役会設置会社は1事業年度に1回、中間配当を行うことができます(会社法454条5項)。
通常の剰余金の配当(株主総会決議によるもの)と異なる点は、
・定款に中間配当の規定を置く必要がある
・決議機関が株主総会ではなく取締役会である
ということです。
事業年度の途中であれば時期の制限はなく、いつでも配当できるとされています。
基準日をめぐる解釈
実務上、多くの会社は「毎年◯月◯日現在の株主に対して中間配当を行う」といった基準日を定款に定めています。
この場合、問題となるのは 基準日と異なる時期に中間配当を実施できるか という点です。
考え方は大きく2つに分かれます。
1.基準日株主に限定すべき(基準日がなければ中間配当できない)
2.基準日以外でも可能(効力発生日時点の株主に配当できる)
条文上はどちらの解釈も成り立つため、明確な結論が出ていません。
株主への情報提供の問題
中間配当は取締役会の決議で行えるため、株主総会のように招集通知で株主に知らされることはありません。
基準日を設けない場合、株主からすれば「知らない間に取締役会で配当が決議されていた」という状況も生じ得ます。
株主が1人だけで、その株主自身が配当を求めているケースでは大きな問題にならないでしょう。しかし、株主が多数いる会社では、基準日や情報提供のあり方に注意が必要です。
商法時代との比較
商法下では、
・中間配当の基準日を必ず定款で定めなければならない
・事業年度が1年の会社に限って中間配当が認められる
とされていました。
しかし、会社法ではこれらの制限は撤廃されています。
そのため、事業年度が6か月の会社であっても中間配当を行うことが可能になっています。
実務上の結論
上場会社のように株主数が多い場合は、基準日を明確にしないと混乱を招くため、定款に基準日を定めて運用するのが一般的です。
一方、株主が限られた非上場会社では、むしろ基準日を置かない方が柔軟に配当できるという利便性があります。
したがって、実務的には次のように整理できます。
・株主が多数いる会社 → 基準日を定め、透明性を確保
・株主が限られる会社 → 基準日をあえて設けないことで柔軟に対応可能
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本日は、中間配当の基準日は必要か?会社法と実務の整理について解説いたしました。
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