解散事業年度に定時株主総会は必要か?会社法と商法の整理
清算事務年度と解散事業年度
会社が解散すると「清算株式会社」となり、以後は 清算事務年度 が開始されます。
清算事務年度は解散日の翌日から1年間とされ、これに基づき定時株主総会を開催し、計算書類の承認を受ける必要があります。
では、解散日を含む最後の事業年度、すなわち解散事業年度についてはどうでしょうか。ここで定時株主総会が必要か否かが実務上の論点となります。
承認されるべき書類の違い
解散事業年度の定時株主総会を要すると考えるなら、承認対象は簿価で作成された計算書類、報告は解散事業年度の事業報告ということになります。
しかし、株主にとって関心があるのは「残余財産の分配額」であり、解散前の業績や事業の概況ではありません。
実際には、解散日における貸借対照表と財産目録(時価評価)の承認こそ重要であり、これにより清算業務が株主の監視を受けることになります。
したがって、解散事業年度の定時総会は不要とする会社法の整理は合理的といえます。
税務上の取扱い
一方、税務申告では簿価の計算書類を提出する必要があるため、帳簿上は簿価ベースで作成します。
ただし、これらは株主総会の承認事項ではなく、株主総会で承認を受けるのは時価ベースの財産目録となります。
つまり、株主総会の承認対象と税務申告用の書類は異なる点に注意が必要です。
商法時代の取扱いとの比較
商法時代には「清算事務年度」という概念がなく、事業年度は解散前の定めどおりでした。
そのため、例えば事業年度末日に解散しても、3か月以内に清算結了できなければ定時総会を開催しなければならないという扱いになり、実務上は非常に悩ましいものでした。
実際には、
・定時総会を省略する
・何とか3か月以内に清算結了する
・あるいは、定時総会を開催して解散時の簿価・時価の両方のBSや事業報告・清算報告を承認する
といった混乱した対応が見られました。取締役でない清算人が事業報告を行うなど、不自然な事態も少なくありませんでした。
会社法の整理と実務への影響
会社法では、こうした不合理を整理し、解散事業年度に定時株主総会を開催する必要はないと明確にされました。
株主が承認すべきは「解散日における時価ベースのBSと財産目録」であり、簿価の計算書類や事業報告の承認は不要とされています。
この結果、
・株主総会で承認する書類が明確になった
・税務書類との混同も回避された
・商法時代のような「簿価と時価の二重承認」の混乱はなくなった
という点で、実務は大きく簡素化されています。
手続きのご依頼・ご相談
本日は、解散事業年度に定時株主総会は必要か?会社法と商法の整理について解説いたしました。
会社法人登記(商業登記)に関するご依頼・ご相談は、司法書士法人永田町事務所までお問い合わせください。